中小企業の価格転嫁道半ば、販売価格引上げが不可欠

 信金中央金庫が発表したニュース&トピックスによると、同金庫の地域・中小企業研究所がとりまとめている「全国中小企業景気動向調査」の結果から、2022 年6月期の仕入価格判断DIは、さかのぼれる1990年以降で、最も高い水準となったことが分かった。一方、販売価格判断DIの上昇は仕入価格判断DIの上昇に追い付いておらず、販売価格への転嫁ができていない状況にあることが明らかになった。

 2022年6月期の前期比仕入価格判断DIは60.1 と、前期比10.8ポイント上昇し、1990年以降、最も高水準。対して、前期比販売価格判断DIは23.5と、同11.0ポイント上昇し、1990年以来の高水準となった。上昇幅は仕入価格判断DIをわずかに上回ったものの、いまだに仕入価格との差は大きい。販売価格DIから仕入価格DIを差し引いた「交易条件指数」の推移は、マイナス幅が拡大傾向にあり、転嫁が十分に進んでいるとは言い難い。

 業種別にみると、建設業や製造業での交易条件指数のマイナス幅が特に大きい。交易条件指数について、建設業と製造業を主要取引先別にみると、大手企業を主要取引先とする企業で特に交易条件指数のマイナス幅が拡大傾向にあり、価格交渉力の弱さを反映している可能性がある。また、建設業では官公庁を主要取引先とする企業でも同様の傾向がみられ、官公庁からの発注価格が、仕入価格上昇の実態を反映し切れていない可能性も示唆される。

 販売価格判断DIへの回答状況(「上昇・やや上昇」、「変わらず」、「やや下降・下降」の3通り)別に業況判断DIの推移をみると、販売価格の引上げに成功している企業は業況が良好な傾向にある。調査員のコメントからは、「スクラップ需要が高まり、中古車の仕入れ値が上昇。販売価格に転嫁できており、業況は好調(自動車部品、スクラップ販売 広島県)」のように、販売価格の引上げの成功が業況改善に結び付いているとの声も聞かれる。

 販売価格の引上げは、原材料価格高騰への対応だけでなく、賃上げにもつながるものといえる。価値創造の流れの広がりは、日本経済の活性化にもつながると考えられる。今回は、仕入価格判断DIと販売価格判断DIから現状の価格転嫁の状況を確認した。その結果、多くの業種において販売価格は仕入価格に追いついておらず、中小企業にとって厳しい局面であることが判明したとしている。

 同ニュース&トピックスの全文は↓https://www.scbri.jp/PDFnews&topics/20220719.pdf