地ビール、“巣ごもり需要”追い風で出荷量7.7%増

 東京商工リサーチが発表した「地ビールメーカー動向調査」結果(有効回答数75社)によると、主な地ビールメーカー75社の2021年1~8月の総出荷量は6601.6キロリットルで、前年同期比を7.7%上回った。前回(2020年)調査では、調査を開始以来、初めて1~8月の出荷量が前年同期を下回ったが、コロナ禍に伴う巣ごもり需要を取り込むためネット販売に力を注いだ企業が多く、出荷量は2年ぶりに増加した。

 一方、ビール大手4社が発表した2021年1~6月のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の販売数量は前年同期比で▲6.0%減少し、9年連続で前年同期を下回った。コロナ禍による緊急事態宣言などの営業自粛で、業務用・飲食店向けが同3割減と大きく落ち込んだ。8月の合計販売数量は業務用が落ち込み、天候不順で家庭向け缶商品の販売も振るわなかった。消費者の嗜好が多様化し、ビール大手各社は厳しい状況が続いている。

 2021年1~8月の出荷量が判明した75社のうち、「増加」は30社(構成比40.0%)、「減少」及び「横ばい」は45社。出荷量増加の要因(複数回答)は、「巣ごもり需要が伸びた」が21社で、増加した7割以上が巣ごもり効果を要因に挙げた。一方、減少の要因(複数回答)は、「イベントの開催中止、延期」が38社と最も多く、「飲食店、レストラン向けが不調」が36社、「観光需要の喪失」は33社と、約8割がこの3つを減少要因に挙げた。

 地ビールメーカーは地道な営業で出荷量を伸ばしてきたが、2020年のコロナ禍の1~8月の総出荷量は、前年同期比▲25.1%減と大きく下回った。ただ、地ビールメーカー各社はこぞって香り、泡、炭酸、風味など、美味しいビール作りに力を注ぎ、消費者の巣ごもり需要を取り込んできた。今回の地ビールブームは根強いと言われる。このブームを終焉させまいと、地ビールメーカー各社はコロナ禍での生き残りをかけた力量を問われている。

 売上比率の一番大きい販売先は、最多が「スーパー、コンビニ、酒店」で43.4%、「自社販売」が28.9%。2021年の商流の変化についは、最多は「インターネット通販の売上が伸びた」が47.4%。3番目にも「インターネット通販の販路を拡大した」が28.4%で、5割近くの企業がインターネット販売に力を注いでいた。一方、「飲食店、レストラン向けの販路を縮小した」も20.3あり、コロナ禍の影響に苦慮している様子がうかがえる。

 新型コロナの影響では、「悪い影響」との回答が89.5%を占めた。新型コロナ感染拡大による今後の懸念(複数回答)は、「レジャー需要減退による観光地での消費の減少」が80.3%、「三密回避などによる飲食店の来店客の減少」が75.0%と、約8割がこの2つの要因を不安材料として挙げた。また、「イベントの再開時期の不透明感による来年以降の出荷環境」が71.1%で、巣ごもり傾向に伴う「アルコール飲料の消費の減少」や「ネット、通販、小売販売の競争激化」を不安要因に挙げるメーカーもあった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211005_01.html