基礎的財政収支の黒字化は2027年度との試算を公表

 2021年3月末時点での国債や借入金などの「国の借金」は、過去最大の1216兆4634億円にのぼる。財政再建は国を挙げての最重要課題だが、遅々として進まない。借金を返すどころか、毎年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)が赤字で借金は増え続けていく。PBとは、税収・税外収入と、国債費を除く歳出との収支で、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標だ。

 政府は21日、中長期の経済財政に関する試算を公表し、「成長実現ケース」と「ベースラインケース」を提示した上で、日本経済が長期デフレ状況に入る前の姿を前提とした「成長実現ケース」では、国・地方を合わせたPBの黒字化は2027年度になるとの見通しを明らかにした。1月の前回試算の2029年度から2年前倒しとなるが、現在の目標年限の2025年度には対GDP(国内総生産)比で0.5%(2.9兆円)程度の赤字が残る。

 そのシナリオは、新たな成長の原動力となるグリーン、デジタル、地方活性化、子ども・子育てを実現する投資の促進やその基盤づくりを進め、潜在成長率が着実に上昇することで、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長率が実現する。この結果、名目GDPが概ね600兆円に達する時期は、2024年度頃、また、消費者物価上昇率は、2025年度以降2%程度に達すると見込まれ、PB黒字化の時期は2027年度となるというもの。

 一方、経済が足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移する「ベースラインケース」については、経済成長率は中長期的に実質1%程度、名目1%台前半程度となる。また、消費者物価上昇率は、0.7%程度で推移する。財政面では、PB赤字対GDP比は、2025年度に1.3%程度となり、試算期間内のPB改善は緩やかなものにとどまる。公債等残高対GDP比は、試算期間内は概ね横ばいで推移し、PB黒字化は進まない。

 政府は、今回の中長期の経済財政に関する試算の中で、財政健全化に向け、歳出改革努力を続け、あわせて歳入改革を進めていくこととした中で、財政健全化目標として、2025年度のPB黒字化目標を維持したが、目標の先送りは必至だ。目標の先送りとなれば、2006年度に黒字化目標を定めて以降、3度目となる。かねてより試算の甘さが指摘され、財政再建実現に向けた道は不透明さを拭えない状況が続くようだ。

 内閣府が提出した「中長期の経済財政に関する試算」は↓

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0721/shiryo_05-3.pdf