約束手形の交換高はピークのわずか3%にまで減少

 経済産業省は2月19日、2026年をめどに約束手形の利用廃止を求める方針を明らかにしたが、東京商工リサーチが発表した「2020年手形・でんさい動向調査」結果によると、2020年の約束手形の交換高は134兆2534億円(前年比27.0%減)で、ピークだった1990年(4797兆2906億円)のわずか3%(97.2%減)にまで減少している。2020年の手形交換高は、134兆2534億円(同27.0%減)に急減。4年連続の大幅減少となる。

  手形交換高は、現在の流れが続くと、2021年は100兆円を下回ることも予想される。全国各地の手形交換所は、手形交換枚数の増加に伴い増設され、1987・88・97年は最多の185ヵ所を数えた後、手形振出の枚数減から交換所の統廃合が相次ぎ、2017年に現在の107ヵ所になった。こうした状況下で、経産省が約束手形の利用廃止を要請する方針。今後、全銀協も債権データ送受信の「電子交換所」設立を予定、手形交換所の統廃合は加速しそうだ。

 約束手形の交換高が急速に減少したのは、現金決済の増加、印紙税や保管コストの負担、紛失リスクなどのほか、全銀協が推進する電子記録債権へのシフトが背景にある。ただ、2013年2月にスタートした「でんさい」は、2020年の交換高が手形の約6分の1にとどまり普及は進んでいない。こうした中での約束手形の利用廃止は、中小企業への資金繰りや電子化対応の支援などに課題を残している。

 「でんさい」の利用者登録数は、2019年5月に初めて減少した。ピークだった2019年4月の45万8127社から、2020年2月まで10ヵ月連続で減少。その後も増減を繰り返し、2020年12月は45万6567社にとどまる。2020年の発生記録請求金額(でんさい額)は22兆1162億円(前年比3.9%増)と伸び悩んでいる。全銀協は2023年度までの5年間で、手形や小切手などの交換枚数の約6割を電子的な方法に移行する目標を立てている。

 残る4割の手形や小切手は、顧客から取立を依頼された銀行がイメージデータに変換、全銀協が設置予定の「電子交換所」に送信して決済する方向で準備を進めている。手形の利用廃止は時代の趨勢で、避けられない部分もある。現金決済では支払側が様々な理由をつけて支払いを遅らせる可能性がある。手形の利用廃止を促す一方で、商取引での現金決済による受取側の権利保護の検討も必要とみられている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210224_01.html