企業の3社に1社がM&Aの「可能性あり」と回答

 帝国データバンクがこのほど発表した「M&Aに対する企業の意識調査」結果(有効回答数9977社)によると、近い将来(今後5年以内)における自社のM&Aへの関わり方については、「M&Aに関わる可能性がある」(「買い手となる可能性がある」、「売り手となる可能性がある」、「買い手・売り手両者の可能性がある」の合計)企業は35.9%となった。また、「可能性はない」が39.0%、「分からない」が25.1%となった。

 企業の3社に1社が何らかの形でM&Aに関わる可能性がある一方、M&Aに関わる可能性がない企業も4割近くにのぼった。「M&Aに関わる可能性がある」企業を業界別にみると、「小売」が42.7%でトップ、次いで「金融」(42.0%)、「サービス」(41.2%)、「運輸・倉庫」(40.4%)が4割台で続いた。他方で、「農・林・水産」(16.7%)は唯一1割台となっており、他の業界と比較するとM&Aに関わる可能性が極めて低い結果となった。

 買い手として相手企業にM&Aを進める上で重視すること(複数回答)は、「金額の折り合い」が76.8%で最多、次いで、「財務状況」(70.3%)、「事業の成長性」(67.4%)、雇用維持などの「従業員の処遇」(54.6%)、「技術やノウハウの活用・発展」(54.3%)が続いた。他方、「売り手となる可能性」がある企業では、「従業員の処遇」が78.3%でトップとなり、「買い手」の同選択肢を23.7 ポイント上回った。

 次いで、「金額の折り合い」(72.7%)、「経営陣の意向」(50.4%)、「人事労務管理や賃金制度」(35.9%)、「財務状況」(32.6%)が上位に挙げられた。雇用維持などの「従業員の処遇」では「売り手」企業が「買い手」企業を、「財務状況」、「事業の成長性」などでは「買い手」企業が「売り手」企業を大きく上回っており、立場によりM&Aを進める上での重要事項に大きな差異があることが浮き彫りとなった。

 2019年版中小企業白書では、社会の大きな変化や経営者の高齢化が進むなかで、「経営者の世代交代」、「経営資源の引継ぎ」、「構造変化への対応」が重要な課題として指摘されている。そこで、これらの課題に関して、今後のM&Aの必要性について尋ねたところ、51.5%と半数を超える企業が今後「M&Aの必要性は高くなる」と認識。また、必要性は「変わらない」が21.7%、「M&Aの必要性は低くなる」が1.7%だった。

 同調査結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190705.pdf