近年、国外財産の保有が増加傾向にあるなか、国外財産に係る所得税や相続税の課税の適正化が喫緊の課題となっていることから、納税者本人から国外財産の保有について申告を求める仕組みとして、2012年度税制改正において国外財産調書の提出制度が創設され、2014年１月から施行された。国税庁はこのほど、国外財産調書制度創設後５年目となる2017年分の国外財産調書の提出状況を公表した。
それによると、５年目の2017年分（2017年12月31日における国外財産の保有状況を記載した）国外財産調書の提出件数は、昨年６月末までに提出されたもので前年比4.9％増の9551件、その総財産額は同11.0％増の３兆6662億円だった。局別に提出件数をみると、「東京局」6154件（構成比64.4％）、「大阪局」1331件（同13.9％）、「名古屋局」699件（同7.3％）の順に多く、この都市局３局で全体の８割半ば（85.6％）を占めた。
財産額でみると、「東京局」は２兆7485億円にのぼり、全体の75.0％を占め、東京・大阪（11.7％）・名古屋（5.2％）の３局で９割強（91.9％）を占める。また、財産の種類別総額では、「有価証券」が52.5％を占める１兆9252億円で最多、「預貯金」6204億円（構成比16.9％）、「建物」4038億円（同11.0％）、「貸付金」1705億円（同4.7％）、「土地」1449億円（同4.0％）のほか、「それ以外の財産」4014億円（同10.9％）となっている。
国外財産調書提出制度は、その年の12月31日においてその価額の合計額が５千万円を超える国外財産を有する居住者は、翌年３月15日までにその財産の種類や数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、税務署長に提出しなければならないというもの。個人を対象に2014年から義務化されたが、国外財産調書は、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、インセンティブ措置等が設けられている。
具体的には、(1)調書を期限内に提出した場合に、記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても加算税を軽減（▲５％）、(2)調書の提出がない場合又は提出された調書に国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときには、加算税を加重（＋５％）する。また、2015年からは故意の不提出や虚偽記載に対して１年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。
なお、国外財産調書の提出者及び提出を要すると見込まれる者に対する2017事務年度（2017年７月～2018年６月）における所得税及び相続税の実地調査の結果、上記(1)の軽減措置を適用したのは168件、増差所得等金額は45億7467万円、また、(2)の加重措置を適用した件数は194件、同51億1095万円だった。
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