大阪シティ信用金庫が発表した「中小企業における2023年の賃上げ動向調査」結果(有効回答数1037社)によると、「賃上げ実施」企業は 45.4%で、昨年と比べて19.1ポイントの大幅増加となり、1998年(48.8%)以来で最多となった。業種別でみると、運輸業において「賃上げ実施」企業が前年比25.7ポイント増加の51.3%と過半数となり、他の業種においても軒並み15~20ポイント増加し、30%~40%台となった。
「賃上げ実施企業ベース」の平均賃上げ率は3.22%で、昨年と比べて0.28ポイント上昇。上昇は2年連続で、3%を超えるのは2013 年(3.18%)以来。賃上げをしない企業を含む「全企業ベース」でみると、平均賃上げ率は1.43%で、12年連続プラス域となり、1%を超えるのは1998年(1.06%)以来となる。賃上げ率の状況をみると、直近の消費者物価上昇率である4.2%に見合う、「4%以上の賃上げ」を行う企業は27.4%となった。
賃上げをする最大の理由は、「雇用の維持や従業員の士気高揚のため」とする企業が 43.7%、次いで、「業績の向上・回復を反映して」(32.3%)、「物価上昇に対応するため」(17.2%)と続く。今回新たに選択肢として加えた「物価上昇に対応」を「雇用維持・士気高揚」に含めると、前年比0.8ポイント増加の60.9%となり、業績に関係なく賃上げを実施する企業が昨年に続いて6割を超えた。
一方で、賃上げをしない最大の理由については、「景気や業況の先行きが不透明なため」とする企業が昨年比4.7ポイント増加の64.4%で最も多くなった。経済情勢の不透明感が強まっており、固定費が確実に増加する賃上げには踏み切れず、慎重な姿勢がうかがえる。業種別でみると、卸売業で「景気の先行き不透明」とする企業が71.5%と7割を超え、また、「自社業績が不振」とする企業は、運輸業(35.1%)と小売業(32.7%)で多い。
賃上げ率(額)を決める基準では、「あくまでも自社業績しだい」とする企業が67.5%となり、昨年と比べて7.7ポイント減少。一方、「自社業績をベースに他社や世間相場を参考」(25.3%)と「他社・世間相場をベースに自社業績を加味」(7.2%)が、それぞれ3.3ポイント、4.4ポイント増加。人手不足に直面する中小企業では、業績にかかわらず従業員の待遇向上に取り組まなければ人材確保が難しくなるという危機感が強まっているようだ。
同調査結果は
https://www.osaka-city-shinkin.co.jp/houjin/pdf/2022/2023-03-24.pdf