消費税の課税対象、資産の譲渡・貸付け・役務の提供

 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や事業として有償で行われる資産の貸付け、役務つまりサービスの提供は、消費税の課税の対象となる。この資産とは、販売用の商品、事業等に用いている建物、機械、備品などの有形資産のほか、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの権利やノウハウその他の無体財産権など、およそ取引の対象となるすべてのものをいう。

 資産の譲渡とは、資産につき同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいう。例えば、売買、代物弁済、交換、現物出資などにより、資産の所有権を他人に移転することをいう。また、資産の譲渡はその原因を問わないので、例えば、他人の債務の保証を履行するために行う資産の譲渡または強制換価手続きにより換価された場合の譲渡は、いずれも、課税の対象となることとされている。

 ただし、相続や時効により財産が移転した場合は、資産の譲渡には当たらないため、課税の対象にならない。また、譲渡したものとみなす場合、(1)個人事業者が自己の販売する商品や事業に用いている資産を家庭で使用したり消費した場合や、(2)法人が自社の製品などをその役員に対して贈与した場合には、その時点で、原則として、時価により譲渡したものとみなされ、消費税の課税の対象となる。

 次に、資産の貸付けには、事務所の賃貸借や自動車のレンタルなど賃貸料を受け取る一般の資産の貸付けだけでなく、資産に係る権利の設定のほか他人に資産を使用させる一切の行為を含むものとされている。事業として行われる資産の貸付けは、通常の貸付けのほか使用や利用も含まれ、有償で行えば課税の対象となる。しかし、いわゆる無償の貸付けなど対価を受け取らないで行うものは課税されない。

 また、資産を貸し付けたときや利用させるときに、権利金や保証金などの名目で金銭を受け取ることがあるが、これらのうち、契約の終了に際して返還する必要のない金銭は、資産の貸付けの対価として課税の対象になる。そのほか、保養所などの福利厚生施設を割安な料金で社員に利用させる場合や音楽、デザインなどの著作物を使用させる場合も課税の対象になる。ただし、土地の貸付けや住宅の貸付けは、原則として課税されない。

 有償で行われる取引であれば、商品の販売や資産の貸付けだけでなく、役務つまりサービスの提供も消費税の課税対象になる。この場合のサービスの提供とは、土木工事、加工、修繕、清掃、クリーニング、運送、通信、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述など、サービスと考えられるものすべてについて対価を得て行うことをいう。

 したがって、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、囲碁や将棋の棋士、芸術家などによる専門的知識、技能に基づくサービスの提供もこれに含まれる。しかし、利子を対価とする金銭の貸付け、信用の保証、保険、登記・検査・裁判などの公共サービスといった消費の性格になじまないサービスの提供のほか、一定の医療、教育といったサービスの提供は、国の社会政策上の配慮から非課税となっている。