価格転嫁率は40.6%、23年夏から3.0ポイント後退

 帝国データバンクが発表した「価格転嫁に関する実態調査」結果(有効回答数1万1267社)によると、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかについては、『多少なりとも価格転嫁できている』企業は75.0%となった。その内訳は、「2割未満」が24.4%で最も高く、「2割以上5割未満」が15.6%、「5割以上8割未満」が17.1%、「8割以上」が13.3%、「10割すべて転嫁できている」企業は4.6%だった。

 他方、「全く価格転嫁できない」企業は12.7%となった。前回調査(2023年7月)より 0.2ポイント低下したものの、依然として価格転嫁が全くできていない企業が1割を超えている。また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は40.6%となった。これはコストが100円上昇した場合に40.6円しか販売価格に反映できず、残りの約6割を企業が負担することを示している。

 企業からは、「材料費の価格転嫁はスムーズにできたが、経費や人件費の価格転嫁ができていない」(機械製造、茨城県)や「ある程度は価格転嫁できたが、エネルギーや原材料の上昇はとどまることを知らず、まったく追いついていない」(飲食料品・飼料製造、愛媛県)といった声があり、価格転嫁ができた企業は増えたものの、前回調査(43.6円)から3.0円分転嫁が後退した。

 価格転嫁率を業種別にみると、価格転嫁率が高い主な業種では、「化学品卸売」(62.4%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(60.6%)などで6割を超えた。他方、低い業種では一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(13.0%)や、「娯楽サービス」(17.1%)、「金融」(18.2%)などで2割を下回った。また、サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、川上・川下業種を問わず価格転嫁率は後退している。

 そのなかでも、『卸売』と比較し『製造』や『小売』では価格転嫁が進まず厳しい状況がうかがえた。さらに、サプライチェーン全体に関わる『運輸・倉庫』(27.8%)は価格転嫁の進展がみられるものの、依然として2割台にとどまっており、企業からも「荷主からの二次請け三次請けが普通であり、荷主に対し直接値上げ交渉ができない」(運輸・倉庫、福岡県)といった声が寄せられている。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240309.pdf