会計検査院はこのほど、企業が支給を受けた雇用調整助成金の額が、従業員に実際に支払った休業手当の額を上回る「超過額」の事例があったことから、厚生労働省に対して超過額が発生しないよう合理的な雇用調整助成金支給額の算定方法とするよう求めた。雇用調整助成金は、景気の悪化などにより休業等した場合に、事業主が支払った従業員への休業分の賃金相当額を対象に、事業主に対して助成する制度。
その支給額は、前年度の賃金総額を基に算定した休業手当相当額に、所定の助成率等を乗じて算出する。会計検査院が、新型コロナウイルス感染症対策として国が特例を設けた雇用調整助成金について、2020年度から2022度までの間に支給決定をした事業主のうちから138事業主に支給された雇用調整助成金計約219億円を対象として検査したところ、25の事業主で計17億円の超過額があることが判明した。
事業主は、雇用調整助成金支給額の算定方法にのっとり、休業手当を支払う前の年度に支払われた、固定給のほか、賞与、超過勤務手当等、労働の対象として支払われる賃金等の総額に基づいて、平均賃金額を算定していたものの、休業手当については、労働組合等と締結した協定により休業手当の支払い率が100%であるとして、固定給のみを対象に支払っていたことが超過額発生の原因と指摘した。
例えば、検査した事業主のうちタクシー事業者をみると、歩合給の支給を受けている従業員がいる場合は、事業主が従業員に実際に支払った休業手当の額に基づいて支給額を算定する実績額方式にしていたため超過額は発生していなかったのに対し、歩合給の支給を受けていない従業員のみを雇用しているため実績額方式を採用していない事業主の中には超過額があった。
厚労省では、実績額方式により雇用調整助成金の支給額を算定する場合には、事業主において実際に支払った休業手当を算出する負担や、労働局でその額を確認する作業が追加発生する可能性があり、支給申請の負担軽減や支給事務の迅速性を考慮すると、実績額方式をそのまま一般的な算定方式とするには困難があるとして、歩合給の支給を受けていない従業員のみを雇用している事業主に対しては、超過額が生じない取組みをしていなかった。
この件は
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/4/pdf/041021_zenbun.pdf