休廃業、「あきらめ」から「ギブアップ」へ潮目変化

 ロシアのウクライナ侵攻を発端とした原料や燃料価格の高騰が経営を圧迫するなど、経営環境は一層厳しさを増している。いまだ見通せない先行きに対し、経営者の事業継続へのモチベーション維持が懸念される。特に後継者問題や事業改革など、従前からビジネスモデルに課題を多く抱えていた企業では、先行き不透明感から自ら事業を断念する「ギブアップ廃業」が、2021年以上に増加するシナリオが最も懸念される。

 帝国データバンクが発表した「全国企業の休廃業・解散動向調査」結果によると、2022年 1~3月に全国で休廃業・解散を行った企業(速報値)は1万3251件(前年同期比▲4.2%)となった。これまで、無利子・無担保融資(通称「ゼロゼロ融資」)や資本性劣後ローンなど、政府による事実上の資本注入策が中小零細企業の経営を強力に下支えし、経営不振から事業継続を断念する休廃業・解散は抑制された状態が続いてきた。

 ただ、資産が負債を上回る割合は前年同期を下回る63.3%となっている。コロナ禍3年目となる今年は、ゼロゼロ融資の元本返済と利払いが本格化する中小企業が多くなる見通し。こうしたなか、休廃業のトレンドは、安定した事業継続が可能だった比較的早期に事業を畳む「あきらめ」のケースから、ゼロゼロ融資の返済見通しが立たない慢性的な経営不振企業の休廃業=「ギブアップ」へと潮目が変化している可能性がある。

 業種別では、全7業種で前年同期を下回った。なかでもトラック輸送など「運輸・通信業」(2021年1~3月:186件→22年同:138件)は前年同期比▲25.8%の急減。「小売業」(907件→812件)、「サービス業」(1792件→1572件)でも二ケタの大幅減少。小売業では、引き続き飲食店が減少傾向で推移(144件→127件)、サービス業でもリーマン・ショック後以来のハイペースだったホテル・旅館が、2021 年から一転して減少した(45件→35件)。

 一方、「建設業」(2021年1~3月:1511件→22年同:1502件)と「不動産業」(439件→431件)は、前年同期からともに減少したものの、減少幅が非常に小さく、ほぼ横ばいで推移した。建設業では内装工事や土木工事など、不動産では土地賃貸業などでそれぞれ増加傾向が目立っており、今後業種全体でも底打ちから増加に転じる可能性がある。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220409.pdf