売上高1兆円以上企業の社長の報酬総額は9860万円

 デロイトトーマツグループが東証一部上場企業を中心に実施した実態調査「役員報酬サーベイ(2021年度版)」結果(有効回答数1042社)によると、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額は中央値で9860万円だった。前年の9887万円と比較し▲0.3%となり、社長報酬総額は微減。前年度の調査結果に続き、本調査では、一部の企業において新型コロナウイルスの影響による報酬の減額等が反映されつつあることがうかがえる。

 短期インセンティブ報酬を導入している企業の割合は72.9%と前年の74.2%から1.3ポイント減少した。採用されている短期インセンティブ報酬の種類をみると、昨年に引き続き「損金不算入型の賞与」を導入している企業が最も多く、導入企業の54.0%を占めている。「損金不算入型の賞与」を採用する背景には設計の自由度が高いことに加え、他の損金算入スキームでは要件が厳しく、採用しづらいことが考えられる。

 株式関連報酬(長期インセンティブ報酬)を導入している企業の割合は74.0%(771社)で今後導入予定の企業も合わせると85.2%(888社)と、定着が見られる。採用されている株式関連報酬の種類の上位2つは「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」(279社)と「業績連動型株式交付信託」(144社)。今後導入を予定している報酬の種類は、「譲渡制限付株式」が多く、引き続き譲渡制限付株式の導入が進むと見込まれる。

 明文化された役員評価制度を有する企業、及び明確な評価制度は存在しないものの何らかの評価基準が存在する企業は合わせて70.1%となり、役員の評価を実施している企業は昨年より1.9ポイント増加した。役員評価を実施している企業のうち、ESG指標を役員報酬決定に活用している企業は6.4%にとどまるが、前年からは1.0ポイント増加。いまだ低い水準にはあるが、わずかながらESG指標を評価に取り込む企業が増えつつある。

 任意の報酬委員会を設置している企業の割合は67.5%と前年より7.3ポイント増加し、任意の指名委員会を設置している企業の割合は60.1%と前年より6.4ポイント増加。この背景には、2018年のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴う、任意の指名・報酬委員会の設置要請が大きく影響していると考えられる。一方、委員会の開催回数は年3回以下の企業が6割近くを占め、指名委員会等設置会社における開催回数と乖離があった。

 同調査結果は↓

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20211122.html