人手不足割合は大きく減少も、依然高水準が続く

 帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査」結果(有効回答数1万405社)によると、現在の従業員の過不足状況は、正社員について「不足」していると回答した企業は49.5%となった。依然として高水準ではあるものの、過去最高を更新した1年前(2019年1月)から3.5ポイント減少。「適正」と回答した企業は40.9%で同1.3ポイント増加、「過剰」と回答した企業は9.6%で同2.2ポイント増加となった。

 「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「放送」(76.9%)がトップ、「情報サービス」(74.6%)においても7割以上の企業が不足を感じていた。以下、「建設」(68.5%)、「運輸・倉庫」(66.0%)、「メンテナンス・警備・検査」(65.2%)、「自動車・同部品小売」(64.6%)が続いた。規模別にみると、「大企業」が60.2%、「中小企業」が46.9%、「小規模企業」が42.7%で人手不足を感じていたが、全ての規模で1年前から減少した。

 また、非正社員が「不足」していると回答した企業は29.2%となった(1年前比5.2ポイント減)。正社員より減少幅は大きく、1月としては3年ぶりに3割を下回った。一方、「適正」は61.9%(同2.5ポイント増)、「過剰」は8.9%(同2.7ポイント増)だった。業種別にみると、「飲食店」は76.9%となり、最も高かった。また、スーパーや百貨店などを含む「各種商品小売」(60.0%)、「旅館・ホテル」(60.0%)が6割台で続いている。

 依然として半数近い企業で人手不足を感じているなか、その対応策として賃金改善を挙げる企業が多くみられる。実際に、賃金改善の理由を「労働力の確保・定着」とする企業は8割を超え過去最高となっている(帝国データバンク「2020 年度の賃金動向に関する企業の意識調査」)。また、同調査ではベースアップを実施する企業の割合は高水準で推移する動きもみられている。

 そこで、人手不足の回答内容別に2020年度の正社員における賃金改善の具体的内容を分析しところ、ベースアップについては、人手不足を感じている企業では50.9%と半数を超える企業で実施する予定で、「適正」(42.4%)より8.5ポイント高い。賞与(一時金)についても31.1%と、「適正」(23.7%)より7.4ポイント高く、総じて、人手不足をより強く感じている企業ほど、ベースアップや賞与といった賃金改善に積極的な傾向がみられた。

 同調査結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200206.pdf