自然災害リスクへの対応、企業の27.0%にとどまる

 2019年の秋は、台風15号や19号、相次ぐ大雨などにより、全国各地で水害や土砂災害などが発生した。近年、自然災害の発生件数が増加傾向にあるなかで、自然災害による企業活動への影響は、自社のみならず、取引先などに広がることも懸念されている。そこで、帝国データバンクが実施した「自然災害に対する企業の対応状況調査」結果によると、自然災害リスクへの対応は、企業の27.0%にとどまることが明らかになった。

 自社における自然災害に対する経営上のリスクへの対応状況については、「対応を進めている」企業は27.0%にとどまった。他方、「対応を進めていない」は66.4%と、6割を超える企業で、自然災害に対する経営上のリスクについて対策や計画などを策定していなかった。とりわけ、「あまり対応を進めていない」(45.0%)が最も高く、多くの企業で検討はしているものの実際に対策や計画などの策定に至っていない実態が浮き彫りとなった。

 対応を進めているとする企業を業界別にみると、「金融」が50.0%と最も高く、次いで、「農・林・水産」(35.8%)、「小売」(30.3%)が3割台で続いた。また、最高の「金融融」と最低の「卸売」(23.0%)や「不動産」(24.2%)で2倍以上の差が表れており、経営上のリスクについて対策や計画などの策定は業界間で差異がみられる結果となった。都道府県別にみると、対応を進めている企業は「高知」(44.2%)が最も高く、4割を超えた。

 以下、「和歌山」(38.6%)、「宮城」(36.8%)、「奈良」(36.5%)、「千葉」(33.1%)が上位にあがった。なお、「対策を進めている」企業が3割以上の都道府県は8県となった。近年、震災により大きな被害を受けた地域や水害などが発生した地域、今後大地震が想定される地域などに所在する企業では、自然災害に対する経営上のリスクへの対応を進めている傾向がみられた。

 このように、これまでに震災や台風による水害などで大きな被害を受けた地域や今後大地震が想定される地域に所在する企業で、リスク対応をより積極的に取り組んでいる様子がうかがえた。企業における自然災害に対するリスク対応は、地域によって濃淡がみられる結果となったが、企業活動への影響を鑑みると、企業は迅速に地域や他社などと連携し、危機管理対策の一環として自然災害というリスクに対応することが求められている。

 同調査結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p191206.pdf