特例適用誤解の申告と認定、重加算税の賦課取消し

 譲渡した土地の全てに居住用財産の譲渡所得の特別控除が適用できるものと誤解して行った確定申告を巡って、当初から所得の過少申告を意図していたものか否かつまり重加算税の賦課要件を満たしているか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、特例適用が可能と誤解して確定申告した可能性があると認定。その上で、重加算税の賦課要件を充たしているとは認められないと判断、原処分の一部を取り消した。

 この事件は、複数の審査請求人が、3棟の建物の敷地の用に供されていた共有土地を更地にして譲渡したことを受け譲渡所得の特別控除の特例を適用して所得税等の確定申告をしたのが発端。この申告に対して原処分庁が、請求人らは居住の用に供していなかったと判断して敷地部分に係る特例の適用を否認するとともに、請求人の1人である社会保険労務士が調査の際に虚偽答弁をしたと判断して所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分等をしてきたわけだ。

 そこで請求人らが、3棟の建物は併せて一構えの家屋で、全て居住の用に供されていた家屋に該当するから敷地の全てに特例を適用でき、また社会保険労務士による虚偽答弁の事実もないなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、請求人の1人である社会保険労務士の行為は、当初から土地の非居住用部分に特例を適用して所得を過少に申告することを意図し、それを外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められることから、重加算税の賦課要件を満たす旨主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 これに対して裁決は、請求人らは税務調査の際、(1)各建物のうち請求人らが日常生活を営んでいた建物(母屋)以外の2棟の建物(別棟)は譲渡直前において物置として利用していた旨を一貫して述べていること、また(2)各建物の各居宅は物置として利用していたと認められることなどからすると、請求人らが各別棟を物置として利用していれば、土地の全てに特例を適用できるものと誤解し、確定申告をした可能性があると言わざるを得ないといえるから、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないと判断した。

 また、請求人らは、確定申告時点では税理士に関与を依頼しておらず、調査の際の請求人らの答弁が虚偽であると認めるに足る証拠などもないことから、重加算税の賦課要件を充足するとは認められないと判断して、原処分の一部を取り消している。

                    (2018.09.27国税不服審判所裁決)