「PTS信用取引に係る合意書」は印紙税の対象外

 有価証券の売買取引は、金融商品取引所のほか、私設取引システム(Proprietary Trading System:PTS)で行うことができる。私的取引システムを利用した株式の信用取引(PTS信用取引)の解禁が注目を集めるなか、PTS信用取引に伴い発生する一部書類が印紙税の課税文書に当たらないことが明らかとなった。これは、金融庁からの照会に対する国税庁の文書回答により明らかとなったもの。

 PTSは、電子情報処理組織を利用して同時に多数の者を相手に有価証券の売買等を集団的・組織的に行うもので、PTS信用取引は、提供する業者(証券会社)自身に利益相反の問題が顕在化するおそれがあること等から「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」により禁止されてきた。しかしその後、金融商品取引所とPTS等との市場間競争の意義について再確認され、自主規制等の整備が行われて、今年7月16日に解禁された。

 これに伴い、PTS信用取引を行う金融商品取引業者(証券会社)は、PTS信用取引に関する顧客への交付書面の一部改定を行うとともに、顧客がPTS信用取引を開始する際には、顧客から、(1)新たに信用取引口座を開設する場合は、「信用取引口座設定約諾書」及び「PTS信用取引に係る合意書」の双方、(2)既に信用取引口座を開設済である場合は、「PTS信用取引に係る合意書」、の差入れを受けることとされた。

 照会は、「信用取引口座設定約諾書」は、印紙税法別表第一課税物件表第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」に該当と認識するが、「PTS信用取引に係る合意書」は、7号文書に該当する「信用取引口座設定約諾書」の内容変更・補充する文書であるものの、7号文書の重要事項である印紙税法施行令第26条第4号に掲げる要件を変更又は補充するものではないことから、課税文書に該当しないと解してよいか、というもの。

 これに対し国税庁は、変更契約書又は補充契約書は、重要事項を変更・補充するもののみが課税対象とされるが、「PTS信用取引に係る合意書」は、第7号文書に該当する「信用取引口座設定約諾書」の内容変更・補充する文書であるものの、重要事項である「受渡しその他の決済方法」、「対価の支払方法」又は「債務不履行の場合の損害賠償の方法」を変更又は補充するものではないことから、課税文書には該当しないとの考えを示した。

 この件については↓

http://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/shozei/190614/besshi.htm#a01