日商、最低賃金引上げで新たな数値目標設定に反対

 日本商工会議所並びに東京商工会議所(ともに三村明夫会頭)は28日、近年、最低賃金の大幅な引上げにより直接的な影響を受ける中小企業が増加していること、更に、最低賃金の引上げペースに関する新たな数値目標の設定や最低賃金の全国一律化に関する議論があり、中小企業から大きな不安を訴える声が高まっていることから、最低賃金に関する緊急要望を取りまとめ発表した。

 また、同日に発表した、全国の商工会議所の会員企業を対象に実施した「最低賃金引き上げに関する調査」結果(有効回答数2775社)によると、昨年度の最低賃金引上げの直接的な影響を受けた中小企業は38.4%と昨年度調査(33.0%)から5.4ポイント増加し、最低賃金の大幅引上げに伴う中小企業への影響が広がっている。こうした状況を踏まえ、この緊急要望では特に下記の3点を強く要望している。

 最低賃金に関する主な要望内容は、(1)足元の景況感や経済情勢、中小企業の経営実態を考慮することなく、政府が3%を更に上回る引上げ目標を新たに設定することには強く反対。(2)最低賃金の審議では、名目GDP成長率を始めとした各種指標はもとより、中小企業の賃上げ率(2018年:1.4%)など中小企業の経営実態を考慮することにより、納得感のある水準を決定すべきで、3%といった数字ありきの引上げには反対する。

 さらに、(3)余力がある企業は賃上げに前向きに取り組むべきことは言うまでもないが、政府は賃金水準の引上げに際して、強制力のある最低賃金の引上げを政策的に用いるべきではなく、生産性向上や取引適正化への支援等により中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべきである。以上、3点を強く要望しているが、日商が最低賃金引上げの議論を巡って反対意見を表明するのは初めてという。

 なお、最低賃金引上げの影響に関する調査結果のポイントは、昨年度の最低賃金引上げの直接的な影響を受けた中小企業は38.4%と昨年度から5.4ポイント増加。業種別でみると、「宿泊・飲食業」(55.1%)、「介護・看護」(49.0%)、「運輸業」(45.0%)で影響が大きかった。仮に、今年度の最低賃金が10円~40円引上げられた場合の経営への影響は、30円及び40円の引上げとなった場合、過半数の企業が「影響がある」と回答している。

 同調査結果の概要は↓

https://www.jcci.or.jp/saichinchosa-kekkagaiyo.pdf