所有者不明土地の増加とともに、居住用家屋が空き家となる最大の契機が相続時であると言われている。その対応のため、2016年度税制改正において、相続した空き家を一定要件のもとで譲渡した場合に、居住用財産の譲渡所得の特別控除に該当する譲渡とみなして同控除を適用する特例が創設された。同特例は、2019年12月末で期限切れとなるため、2019年度税制改正において、制度の拡充を行った上で、適用期限が4年延長される。
同特例は、(1)相続開始直前に被相続人のみが居住していた1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)及びその敷地で、相続の開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡、(2)譲渡価額が1億円を超えない、(3)譲渡をする家屋・土地は、相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に使われていない、ことを適用要件に、居住用財産譲渡の場合の3000万円の特別控除が適用できる。
特例創設の趣旨が、居住用家屋が空き家となることを防ぐ目的であることから、被相続人が死亡した時点で1人暮らしだった場合に限定され、区分所有建物は除かれるなど、あくまで相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならず、要件は結構厳格だった。今回の改正においては、一定の要件を満たせば、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合も対象に加えられ、適用期限についても4年延長されることになった。
税制改正大綱によると、「空き家に係る譲渡所得の3000 万円特別控除の特例について、老人ホーム等に入所をしたことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等は、一定の要件を満たす場合に限り、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用するほか所要の整備を行った上、その適用期限を4年延長する」としている。
具体的な要件としては、(1)被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所をしていた、(2)被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。この改正は、今年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又はその敷地等の譲渡について適用される。