路線価及び評価倍率は相続税や贈与税の土地等の課税評価額の基準となるが、その2018年分の路線価等は去る7月2日に公表された。今年1月1日時点の全国約32万4千地点における標準宅地の前年比の変動率の平均は+0.7%となり、3年連続の上昇となった。路線価日本一は、33年連続1位となる東京・銀座「鳩居堂前」(1平米4432万円)で、昨年(同4032万円)に引き続き過去最高を更新した。
ところで、土地評価というと路線価を使えば問題ないと思いがちだが、相続・贈与時と譲渡時では路線価の扱いが異なるので注意が必要だ。路線価はあくまでも相続や贈与時の土地等の課税評価額の基準となるものだから、譲渡の場合は、路線価が時価の80%であることから、0.8で割り戻して正規の時価を算定することが原則となる。例えば、事業承継対策で自社株を後継者に移転する場合、贈与と譲渡では路線価の扱いが違ってくる。
オーナー経営者が後継者である子どもに自社株式を移転する場合、その自社株の時価を算定するときに、その法人の純資産価額を求める際の土地評価において、路線価の扱いは、相続時精算課税制度を活用した贈与の場合と相当の対価を得て譲渡した場合とでは異なってくる。路線価をそのまま使えるのは、贈与時のみとなる。譲渡の場合は、路線価を0.8で割り戻して正規の時価を算定することが原則となる。
譲渡によって自社株を後継者に移転する場合、通常は親族間取引となるので、税務当局は正しい時価が使われているかどうかを重点的にチェックしてくると思われる。その際、自社株の時価を算定するときの土地評価において基準となるのは、路線価を0.8で割り戻した価額ということになる。これが第三者間の取引であれば、当事者間で合意した金額が時価として認められるが、親族間の取引ではそうはいかない。
路線価の扱いは、その取引が相続・贈与なのか譲渡なのか、また、親族間なのか第三者間なのかによって、路線価をそのまま適用できる場合と0.8で割り戻す必要が出てくる場合とに分かれるわけだ。2018年分の路線価は上記のように3年連続の上昇となったことから、後継者への自社株の移転など事業承継対策を本格的に考える中小企業経営者も増えているが、こうした路線価の扱いの違いにも留意したい。