相続分野を40年ぶりに見直す民法改正案が衆院通過

 相続分野の規定を約40年ぶりに見直す民法改正法案など関連法案が6月19日、衆院本会議で可決し、参院に送付された。相続法改正の柱は、残された配偶者が亡くなるまで今の住居に住み続けられる「配偶者居住権」の創設や、遺産分割における配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)などの見直しだ。相続人となった高齢の配偶者保護に重点を置いたものである。

 現行制度でも配偶者は住居の所有権を取得すればそのまま住み続けられるが、所有権を取得すれば預貯金などのその他の遺産の取り分が少なくなり、生活資金に困る可能性がある。配偶者居住権は売却する権利がないため、相続税評価が低くなり、その分預貯金などの他の遺産の取り分が増える。被相続人の死亡後も被相続人が所有していた住宅に配偶者が無償で住み続けることができる権利を確保する。

 遺産分割規定の見直しでは、婚姻期間20年以上の夫婦間で住居を生前贈与または遺贈した場合に、持戻し免除の意思表示があったものと推定し、配偶者に贈与等した住居は遺産分割から除かれて、相続の対象とはならない優遇措置を設ける。この結果、現預金や不動産などの財産を相続人で分ける際に、配偶者の取り分は実質的に増えることになり、残された配偶者の生活への保護が図られる。

 遺産分割に関する見直しでは、さらに、相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる「仮払い制度」の創設や、相続開始後に共同相続人の一人が遺産の全部又は一部を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策を設けることにより、処分がなかった場合と同じ結果を実現できるようにする財産処分案などがある。

 ほかでは、相続人以外の者の貢献を考慮するため、被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、被相続人に対して無償で介護や看病などをしたことで被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合は、相続人に対し、その特別に寄与した者の寄与に応じた金銭の支払を請求できることとする。その支払については、当事者間で協議するが、協議が調わないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求できる。