公取委、価格転嫁で8175社に対し注意喚起の文書送付

 公正取引委員会が公表した「独占禁止法上の優越的地位の濫用に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組みに関する特別調査」結果によると、受注先と価格転嫁の協議に十分に応じなかったとして8175社に対し、注意喚起の文書を送付したことが分かった。同調査は、主に2022年6月から2023年5月にかけての取引を対象にしたもので、2023年5月に39業種の事業者11万社に対してコスト上昇分の価格転嫁の状況を第1回書面調査した。

 また、第2回書面調査や2022年緊急調査のフォローアップ調査も実施した結果、回答した4万7725社のうち、独占禁止法Q&Aに該当する行為が認められた合計8175社の発注者(第1回書面調査及び第2回書面調査計6920社、2022年の注意喚起対象4030社のフォローアップ調査1255社)に対し、優越的地位の濫用の未然防止の観点から、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。

 回答者数に占める注意喚起文書送付対象者数の割合は、2022年緊急調査では21.2%(注意喚起文書送付対象者数4030社/回答者数1万8998社)だったのに対し、今般の特別調査では17.1%(注意喚起文書送付対象者数8175社/回答者数4万7725社)と4.1ポイント減少した。注意喚起文書の送付件数が多い業種は、情報サービス業、協同組合、道路貨物運送業、機械器具卸売業、総合工事業、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業だった。

 今般の特別調査の結果、コスト別の転嫁率を中央値でみると、「原材料価格」(80.0%)や「エネルギーコスト」(50.0%)と比べ、「労務費」(30.0%)は低く、労務費の転嫁は進んでいない。また、 (1)ビルメンテナンス業・警備業、(2)情報サービス業、(3)技術サービス業、(4)映像・音声・文字情報制作業、(5)不動産取引業、(6)道路貨物運送業の6業種が特にコストに占める労務費の割合の高い業種だった。

 この6業種の労務費の転嫁に関する現状としては、そもそも価格転嫁の要請をしていない受注者が多い、要請をしても労務費の上昇を理由としていない受注者が多い、労務費の上昇を理由として要請してもその転嫁率が低い受注者が多い、という結果だった。他方で、価格転嫁の要請をしていない受注者が多いものの、要請した場合には労務費の転嫁率が高い受注者が多かった業種もあった。

 今般の特別調査の回答者からの声として、労務費の転嫁の交渉実態として、価格転嫁を認めてもらえたとする声がある一方で、「労務費の上昇分は受注者の生産性や効率性の向上を図ることで吸収すべき問題であるという意識が発注者に根強くある」、「交渉の過程で発注者から労務費の上昇に関する詳細な説明・資料の提出が求められる」などの理由で、労務費の価格転嫁の要請をすることは難しいとの声があった。

 同調査結果は

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/dec/231227_tokubetucyosakekka.html