帝国データバンクがこのほど発表した「タクシー業の倒産動向調査」結果によると、“タクシーがつかまらない”といった深刻な台数不足が指摘されるタクシー業界で、倒産件数が過去10年で最多を更新したことが分かった。2023年度(2023年4月~2024年3月)に発生したタクシー業の倒産は33件判明し、2年連続で前年度(28件)を上回ったほか、これまで最多だった2011年度(36件)に迫る水準となった。
タクシー業界ではコロナ禍に発生した、利用客減少による売上高の急減から立ち直りつつある。ただ、プロパンガスなど燃料代の高騰が収益を圧迫し、経営環境は厳しさを増している。2023年度におけるタクシー業の倒産のうち、半数を「物価高」倒産が占めたほか、2023年度の業績が判明したタクシー業のうち半数超が、燃料高などを理由に赤字や減益など「業績悪化」に直面した。
こうしたなか、近時は需要増にも関わらず「ドライバー不足」で営業が困難になるタクシー会社の経営破綻が目立ち始めた。愛知県の「毎日タクシーグループ」(破産、2024年1月)はコロナ禍での需要減に加え、ドライバーの高齢化や不足から運行に行き詰まり、事業継続を断念した。足元では慢性的なタクシー不足に対し、代替交通手段として「配車アプリ」を活用したライドシェア制度が部分的に解禁された。
タクシー業界にとっては、「ライバルとなる競争相手」か「共存共栄のパートナーか」の見極めが急務となる。「安心できる移動手段」としてのタクシー運行をどう存続させるのか、利用者・タクシー会社ともに再考すべき時期に差し掛かっている。