新経済連盟、暗号資産の税務上の取扱いの見直し要望

 新経済連盟はこのほど、暗号資産に関する税制上の課題と提言を発表し、法人に関しては、喫緊の課題として、企業(スタートアップ企業に限らない)が自社発行かつ自己保有するトークンについて、また、スタートアップ企業が自社発行かつ第三者が保有するトークンのうち、短期売買目的でないものについても、スタートアップ企業の事業の孵化や成長、拡大を支援する観点から、時価でなく簿価で評価するよう見直すことを求めた。

 個人に関する税制については、(1)暗号資産の取引から生じる利益について、申告分離課税(一律20%)の対象とするとともに、損失について、暗号資産に係る所得金額からの繰越控除を認めること、暗号資産デリバティブ取引についても、申告分離課税を認めること、(2)相続した暗号資産への課税のあり方(相続税評価時・譲渡時)について、見直すことを要望している。

 自社保有トークンに関する税制上の扱いは、期末に自社が保有するトークンについて、アメリカなど主要先進国では未実現利益に課税されていないのに対し、わが国では法人が暗号資産を保有しているのみであっても、未実現利益に課税し、税務上の取扱いが不明確。それが、わが国のスタートアップ育成やトークンエコノミーの進展、連関する事業者のビジネス展開、生来得べかりし税収等を閉ざす形となっていると指摘した。

 暗号資産に係る所得税については、現行、暗号資産の取引から生じる利益は雑所得(損益通算が認められない)、総合課税の対象(累進課税)、損失の繰越控除の禁止と、海外に比べて厳しい税制、高い税率となっており、納税者の海外流出や雑所得を20万円以下に抑える投資の抑制などの問題が生じていると指摘。暗号資産の取引から生じる利益を申告分離課税の対象とすることや、損失の繰越控除を認めることなどを求めている。

 また、暗号資産の相続税評価額は、現行、相続開始日の最終価格しか認めておらず、暗号資産は価格変動が大きいことから、相続開始日の取引価格が高騰した場合は、納税者負担の増大や偶発性が問題となっている。そこで、暗号資産の相続税評価額の計算においても、相続開始日の最終価格(時価)のほか、相続月を含む過去3ヵ月の月平均時価も含めて最も低い価額とすることを認めるべきとしている。

 さらに、暗号資産を譲渡した場合、雑所得として課税されるが、相続暗号資産の取得原価は「被相続人の購入時の取得原価」が引き継がれ、相続税の負担分が考慮されないことから、暗号資産の相続人は相続時の時価で評価した額に対する相続税を負担した上、譲渡時においても所得税を全額負担することになると指摘。相続した暗号資産を譲渡する場合には、相続税の一部を取得費に加算して税額を軽減できる特例の対象とすることを要望している。

 同提言は

https://jane.or.jp/app/wp-content/uploads/2022/10/20221021document.pdf