2022年度賃上げ、コロナ前に並ぶ82.5%の企業が実施

 東京商工リサーチが発表した「2022年度の賃上げに関するアンケート調査」結果(有効回答数6204社)によると、2022年度に賃上げを実施した企業(予定含む)は82.5%で、前年度の70.4%から12.1ポイント上昇した。コロナ前の2019年度の80.9%と比べても1.6ポイント上回り、定期的な集計を開始した2016年度以降では、官製春闘の2017年度の82.7%に次いで、2番目に高い水準となった。

 規模別の「実施率」では、大企業が88.1%だったのに対し、中小企業は81.5%と、6.6ポイントの差がついた。また、産業別でみると、最も高かったのは、「製造業」で87.2%だった。以下、「卸売業」84.5%、「建設業」83.7%と続く。最低は、「農・林・漁・鉱業」の60.7%だった。「金融・保険業」(67.3%)と「不動産業」(67.5%)を合わせた3産業は、実施率が6割台にとどまった。

 規模別は、大企業の「農・林・漁・鉱業」(100.0%)、「運輸業」(95.2%)、「建設業」(93.9%)、「製造業」(90.0%)で実施率が9割を超えた。一方、中小企業で9割を超えた産業はなく、80%台は「製造業」(86.7%)、「卸売業」(83.9%)、「建設業」(82.5%)、「情報通信業」(80.0%)の4産業。賃上げの実施率は、大企業が10産業すべてで中小企業を上回った。人手不足が深刻化するなか、今後は中小企業の人材確保に影響を与えることが懸念される。

 賃上げ項目は、最多が「定期昇給」の81.0%、次いで、「賞与(一時金)の増額」44.2%、「ベースアップ」42.0%、「新卒者の初任給の増額」18.2%の順。前年度と比べ「定期昇給」は2.1ポイント低下したが、「賞与(一時金)の増額」は6.5ポイント、「ベースアップ」は11.7ポイント、それぞれ上昇した。物価上昇などを背景に、「ベースアップ」を実施した企業は2019年度以来、3年ぶりに40%台に乗せた。

 賃上げ率をみると、1%区切りでは、最多は「1%以上2%未満」の33.4%、次いで、「2%以上3%未満」が31.9%。「1%未満」を含む「賃上げ率3%未満」は69.8%で、実施企業の約7割が3%未満の賃上げにとどまった。規模別では、賃上げ率「3%以上」は大企業が18.4%に対し、中小企業は31.6%。経済活動の本格再開で人手不足が懸念されており、人材確保のためにも賃上げせざるを得ない中小企業の姿が浮かび上がる。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220823_01.html