文明開化の音が響く1879年(明治12年)、近代国家への道を歩み始めた日本で初の手形交換所が大阪に設立されたが、東京商工リサーチが発表したレポートによると、それから143年目の今年11月2日、全国179ヵ所の手形交換所が手形・小切手の交換業務を終了することが分かった。現在の紙の手形、小切手は引き続き流通し、企業側に手続き変更などは必要ない。今後の手形交換業務は全国銀行協会が運営する電子交換所が引き継ぐ。
これまで手形交換所を経由して搬送していた手形現物は、データ化して電子交換所に送信する。これにより遠隔地への取立の時間短縮や災害時の輸送リスクも解消する。政府は、2026年度までに紙の約束手形の廃止を打ち出し、“でんさい”やインターネットバンキングなど決済の電子化を急いでいる。全銀協などによると、手形交換所は1879年に大阪手形交換所、1887年に東京手形交換所が設立された。
その後、経済発展とともに手形の流通が活発になり、ピークの1990年の手形交換高は4797兆2906億円に達した。しかし、現金決済への移行や、手形の印紙税、保管、輸送などのコスト負担から手形離れが進んだ。2013年に電子記録債権“でんさい”も始まり、インターネットバンキングなどで決済の電子化が進んだ。この流れを受け2021年の手形交換高は、ピーク時の2.5%にとどまる122兆9846億円にまで激減した。
電子交換所でも不渡手形による銀行取引停止処分の措置は続く。これまで各手形交換所に参加する金融機関に通知されていた情報は、今後、電子交換所に参加する全国すべての金融機関で共有する。全銀協によると、手形交換所の業務終了後は、これまでの不渡り情報は削除され、電子交換所に手形交換所の不渡り情報は引き継がれないという。今後、明治時代から続く商慣習が大きく変わる。 個人決済は電子マネーなどが急速に進行し、現金を使わず生活することも可能になった。一方、企業の決済は依然として紙の手形、小切手が残り、電子化が遅れている。電子交換所の誕生は、紙の手形の廃止に向けた歴史的な転換の一歩になる。だが、運用をスムーズに進めるには、なかなか利用が進まない“でんさい”の認知と同時に、企業側のITリテラシーの向上も急務となる。