大阪シティ信用金庫が府内取引先企業を対象に実施した「中小企業における後継者問題調査」結果(有効回答数1355社)によると、企業経営者の年齢は、「50歳代」が31.0%で最も多い。また、「60歳代」が20.5%、「70歳以上」が14.9%あり、これらサラリーマンなら定年となる「60歳以上」が35.4%と約3社に1社の割合となっている。これを直近2回の調査と比較すると、「70歳以上」は調査のたびに増加している。
後継者の決定状況は、「すでに決まっている」とする決定企業が29.9%であるのに対し、「決まっていない(未決定)」が56.0%と5割半ばを占めた。「決まっていない」企業の内訳は、「まだ決める時期ではない」という時期尚早企業が42.7%、「決める必要があるが決まらない」という未定企業が13.3%。また、「自分の代限りにするので後継者は不要」とする廃業予定企業は14.1%だった。
従業者規模別でみると、「自分の代限り」とする割合は、5人未満の規模層(28.8%)でとくに高くなっている。 また、経営者の年齢別でみると、「決まっている」とする割合は、年齢が高い層ほど高くなる傾向がみられる。ただ、近年の推移をみると、後継者を決めていなければならない年代である経営者年齢「60歳以上」において、決定企業の割合が徐々に低下してきており、事業承継が円滑に進んでいるとは言い難い状況がうかがえる。
既に決まっている企業の具体的な後継者は、「子供」と答えた経営者が79.6%で圧倒的に多く、これに「子供以外の親族」の11.1%を加えた親族内承継は90.7%と9割に及ぶ。一方、「親族以外の役員・従業員」と答えた経営者は9.1%となった。これを2020年の前回調査と比べると、「子供」が2.2ポイント増加に対し、「子供以外の親族」は0.5ポイント減少、「親族以外の役員・従業員」も1.4ポイント減少した。
一方、後継者が未定企業のその理由は、「適任者が見当たらない」と答えた経営者が36.7%で最も多く、次いで「後継予定者から了解を得られない」が27.8%あった。以下、「候補者はいるが、決めかねている」(17.2%)と「事業承継を考える時間や余裕がない」(16.1%)が僅差で続いている。ちなみに、経営者年齢「60歳以上」では「了解を得られない」が34.2%と最も多くなっている。
決まらなかった場合の対応は、「可能なら事業譲渡(売却)したい」とする経営者が70.6%で圧倒的に多く、「廃業する」は29.4%だった。中小企業のM&Aを支援する環境の整備に伴い、事業譲渡が事業承継の手段の一つとして認識され、その傾向が続いているとみられるが、前回調査(2020年)と比べると、コロナ禍による業績低迷などにより、事業譲渡をあきらめ、廃業を選択する企業が増えていることがうかがえる。
同調査結果は↓https://www.osaka-city-shinkin.co.jp/houjin/pdf/2022/2022-05-19.pdf