監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直し

 共働き世帯の増加が、公認会計士制度の見直しにつながっている。今国会で審議されている「公認会計士法及び金融商品取引法の一部改正法案」では、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直しが盛り込まれた。具体的には、監査法人に勤務する社員の配偶者が会社等の役員である場合、監査法人の業務を制限するのは、その会社等の監査証明業務に関与している社員等に限定する。

 現行制度では、監査法人と被監査会社等との間の独立性確保を目的に、その社員が監査に関与するか否かを問わず、監査法人の全社員が業務制限の対象となっている。見直しの背景には、近年の共働き世帯の増加等を受け、配偶者が被監査会社等の役員等であることを理由に、監査法人の社員への登用を見合わせた事例が出ているとの指摘があった。独立性の確保については、本年1月に公表された金融審議会公認会計士制度部会報告がある。

 同報告によると、「『監査法人と被監査会社等との間の独立性の確保』という本規定の趣旨に立ち返って考えると、監査法人の社員の配偶者が被監査会社等の役員等であったとしても、当該社員が当該被監査会社等の監査証明業務に直接従事する場合あるいは何らかの影響を与えるような立場にない限り、監査法人の独立性に及ぼす影響は限定的であると考えられる」としていた。

 改正法案では、このほか、(1)上場会社監査の担い手の裾野の拡大を背景に、上場会社等の財務書類についての監査証明業務を行う監査法人・公認会計士に対し、公認会計士法上、上場会社監査を行うことについての登録を求める「登録制」を導入し、日本公認会計士協会が登録者の適格性を確認することや、(2)資格要件である実務経験期間の見直し(2年以上→3年以上)がある。

 さらに、(3)公認会計士・監査審査会の立入検査等において監査法人等の業務運営に加え虚偽証明等の検証も行えることとする立入検査権限等の見直し、(4)企業等に勤務している公認会計士の登録事項に「勤務先」を追加、などが盛り込まれている。なお、改正法案は4月12日の衆議院本会議において全会一致で可決され、参議院に送付されている。成立すれば、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。