東京商工リサーチの調査によると、国内107銀行の2021年3月期決算の「総資金利ざや(中央値)」は、0.16%(前年0.13%)で、前年を0.03ポイント上回った。2018年同期以来、3年ぶりに上昇した。だが、「資金運用利回り(中央値)」の低下には歯止めがかからず、貸出の低金利競争のなかで銀行の資金運用の苦境を物語っている。「総資金利ざや」とは、「資金運用利回り」-「資金調達原価率」で算出され、収益を示す一つの指標。
2021年3月期の「資金運用利回り(中央値)」は0.94%で、3月期で1.0%を下回ったのは2010年に調査を開始以降、初めて。前年と比較可能な105行のうち、資金運用利回りが前年を上回ったのは11行(構成比10.4%)で、1割にとどまった。一方、「資金調達原価」は全105行が前年を下回った。銀行は、資金の市場調達コストの低下や経費削減などで「資金調達原価」を低減し、「総資金利ざや」を確保している構図が浮き彫りとなった。
国内107銀行のうち、前年と比較可能な105行を対象に、2021年3月期の「総資金利ざや」が前年より上昇したのは67行(構成比63.8%)で、前年の47行から20行増加。67行のうち、52行(同77.6%)は「資金運用利回り」が縮小したが、「資金調達原価」も低下したことで「総資金利ざや」が上昇した。「資金調達原価」の中央値は0.77%で、前年より0.11ポイント低下。前年を下回ったのは全105行(前年84行)に増加した。
「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は8行で、前年から9行減少。2014年3月期(9行)以来、7年ぶりの一ケタ。「逆ざや」は、2017年3月期に20行と、2010年以降で最多を記録。その後、2019年同期は14行まで減少したが、2020年同期は低金利のなかで金利収入を稼げた不動産向け貸出等が抑制され17行に増加。2021年同期は、「資金運用利回り」が改善しないなか、「資金調達原価」の圧縮で「総資金利ざや」は上昇した。
2021年3月期「逆ざや」は、「みずほ銀行」▲0.17%、「あおぞら銀行」▲0.48%、「筑波銀行」▲0.04%、「第四北越銀行」▲0.01%、「三重銀行」▲0.08%、「中国銀行」▲0.02%、「東京スター銀行」▲0.19%、「みなと銀行」▲0.04%の8行だった。このうち、2021年4月に合併したため前年と比較できない第四北越銀行を除く7行は、前年に引き続き「逆ざや」だった。
同調査結果は↓