コロナ禍の3月期決算企業、「減収増益」傾向鮮明に

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2021年3月期決算17万社の業績動向調査」結果によると、2021年3月期決算(17万76社)の業績は、コロナ禍の影響で売上が落ち込む一方、利益は逆に上昇に転じる「減収増益」の傾向が顕著となった。「増収企業」の構成比は37.0%で、前期(2020年3月期、47.3%)から▲10.3ポイント減少したが、「増益企業」は49.2%(前期44.5%)と前期から4.7ポイント増加した。

 増収企業の比率(増収企業率)は、コロナ前の2019年3月期は大企業、中小企業のいずれも5割超え(大企業61.5%、中小企業50.8%)だった。しかし、2020年3月期は第4四半期以降、コロナ禍の影響を受け、ともに5割を割り込んだ(大企業47.9%、中小企業47.3%)。通年でコロナ禍の影響を受けた2021年3月期はそろって30%台(大企業32.1%、中小企業37.5%)まで落ち込み、6割を超える企業の売上高が前期以下となった。

 利益総額は、38兆8709億円(前期比5.2%増)で、前期から1兆9227億円増加。コロナ前の2019年3月期は大企業、中小企業ともほぼ同水準(大企業0.7%増、中小企業0.04%増)で前期を上回っていたが、2020年3月期は大企業が前期比▲26.9%減、中小企業が同▲31.4%減と、いずれも約3割の減益に転じた。ただ、2021年3月期は、大企業は引き続き、前期割れ(▲1.1%減)だったが、中小企業は同44.6%増と大幅に改善した。

 大企業は、売上ダウンに設備などの減損処理やリストラに伴う特別損失などで、最終赤字が膨らんだ企業も多く利益額を押し下げた。中小企業は、固定費の圧縮効果や雇用調整助成金・持続化給付金などの新型コロナ対策補助金が本業外の利益に計上され、増益につながったとみられる。中小企業の黒字企業率は、2021年3月期は74.1%と2020年3月期から1.9ポイント上昇。本業外利益の計上などで赤字転落を回避した企業が多かったようだ。

 中小企業の10産業の損益別で、黒字企業率が最も低かったのは「サービス業他」の70.2%だった。サービス業は、飲食業をはじめ宿泊業、旅行業などコロナ禍が直撃した業種などが多く含まれる。過去5年間の推移でみると10産業のうち、黒字企業率の最低が続いていた。ただ、前期(2020年3月期)は黒字企業率65.7%まで落ち込んだが、2021年3月期は70.2%とここ5年間で初めて70%台に乗せ、利益の改善が見られた。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211013_01.html