長引くコロナ禍で、人手不足の緩和状態続く府内企業

 大阪シティ信用金庫が発表した「中小企業における人手不足の実態と最低賃金引上げの影響等調査」結果(有効回答数1305社)によると、自社の業況から判断した人手の現状は、「適正」と答えた企業が 76.5%で圧倒的に多い。これに対し、「過剰」は7.7%、「不足」は15.8%となった。近年30%台で推移していた人手不足企業割合は、新型コロナの影響による企業業績の悪化で昨年は16.0%まで減少し、人手不足感が急激に低下した。

 今年も、緊急事態宣言の再延長で経済活動の制約が長引くなど、中小企業景況の回復が遅れており、人手不足の緩和状態が依然として続いている。業種別でみると差異が大きく、「小売業」(14.9%)で過剰感が続いている一方、「建設業」(27.0%)と「運輸業」(25.3%)で特に不足感が強い。さらに従業者規模別でみると、規模が大きくなるほど不足感が高まる傾向がみられ、「5人未満」の8.4%に対し、「50人以上」では28.6%となっている。

 人手不足になった原因(複数回答)については、全体でみると、「慢性的に人手不足である」と答えた企業が 41.5%で最も多く、人手不足が恒常的な経営上の問題点になっていることがうかがわれる。次いで、「売上・受注の回復で忙しくなった」が 34.3%、「退職による欠員が補充できていない」が25.6%、「事業を拡大した(既存業務の拡大、多角化等)」が 16.4%で続いている。

 人手不足への対応(複数回答)は、「従業員を募集している」と答えた企業が74.9%と7割を超え、圧倒的に多い。求人以外の対応策では、「外注を活用している」(28.5%)と「省力化・効率化を推進している」(26.6%)が上位となった。また、「残業や休日出勤など現人員で対応している」(10.6%)企業が1割程度ある。先行きが見通せない状況の中で、人件費負担を考慮し、すぐに募集しないで様子を見る企業もみられる。

 「従業員を募集」と答えた企業(155社)の求める応募者が集まる見通しについては、「すぐに集まる」は14.8%に過ぎず、「時間がかかる」とする企業が69.7%と圧倒的に多く、「かなり困難」とする企業は15.5%だった。前年調査と比べると、コロナ禍により「かなり困難」とする悲観的な予想は後退したが、中小企業では募集をしてもなかなか応募者が集まらず、また雇用のミスマッチもあり、依然として人員の速やかな補充は難しい状況にある。

 このたびの最低賃金引上げが自社経営に与える影響については、「大きな影響がある」と答えた企業(6.7%)は1割に満たないが、これに「多少影響がある」(42.5%)を加えた「影響あり」とする企業は 49.2%と半数近くにのぼる。経営者からは、「最低賃金引上げは、景気全体の回復まで猶予がほしい」などの声もあり、最低賃金の上昇による人件費負担の増加で、今後収益環境の悪化が懸念されている。

 同調査結果は↓

https://www.osaka-city-shinkin.co.jp/houjin/pdf/2021/2021-10-05.pdf