後継者への移行期間、企業の半数が「3年以上」

 企業経営者の高齢化が進んでいる。また、全国の後継者不在率は2020年時点で65.1%(帝国データバンク調査)となり、後継者不在による事業承継問題はこれまで以上に顕在化。他方、政府は2021年度予算に事業承継支援として100億円近くを計上し、事業承継とM&A支援をワンストップで行う体制を4月より開始した。政府主導で企業に対して積極的に働きかけるプッシュ型のサポートを中心に、支援策は一層推し進められている。

 そこで、帝国データバンクが実施した「事業承継に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万1170社)によると、事業承継を行う際の後継者への移行期間は、「3~5年程度」とする企業が26.9%で最も高かった。次いで「6~9年程度」が13.8%で続き、「1~2年程度」が11.3%、「10年以上」が11.2%と近い水準で続いた。総じて移行期間に「3年以上」を要する割合は51.9%となり、半数を上回った。

 事業承継を行う際の後継者への移行期間を規模別にみると、大企業で「3年以上」かかる割合は41.0%。一方で、中小企業は54.1%、小規模企業は55.7%と大企業より10ポイント以上高かった。業界別にみると、「建設」では3年以上かかる割合が59.9%でトップ。「製造」(54.8%)や「卸売」(52.2%) も半数超となり、全体(51.9%)を上回った。一方で、「農・林・水産」は32.1%、「金融」は23.6%で、他業界と比べて低い割合だった。

 2020年2月以降、国内では新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会情勢は大きく変化した。そうしたなかでの自社の事業承継に対する意識の変化の有無は、「意識が変化した」企業は8.7%。他方、「特に変化なし」は79.8%となり、8割近くにのぼった。「意識が変化した」割合の内訳をみると、新型コロナの影響で「事業承継の時期を延期」と考えている企業は4.3%で、意識が変化した様態としては最も高かった。

 一方、「事業承継の時期を前倒し」は3.5%。また、「廃業予定から事業承継に変更」は0.4%、「事業承継予定から廃業予定に変更」は0.5%だった。事業承継への意識に変化があった企業からは、「新型コロナによる経営環境の変化に対応するため、事業承継を延期する」(貸事務所、愛知県)や「このような状況で長期的な展望が見通せないので、事業承継についても現実味を感じられない」(建築用木製組立材料製造、岩手県)のような意見が聞かれた。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210905.pdf