負債1000万円未満の倒産、急増で年間600件超えも

 東京商工リサーチが発表した「負債1000万円未満の倒産調査」結果によると、2020年1~8月に発生した「負債1000万円未満」の企業倒産は432件(前年同期比27.4%増)に達し、前年同期(339件)の1.2倍増で推移している。新型コロナの影響が深刻化した4月が57件(前年同月比83.8%増)、6月94件(同100.0%増)、7月83件(同80.4%増)と、春から急増した。

 5月は地裁の一部業務縮小や金融機関の支援効果で17件(前年同月33件)と減少し、8月も47件(前年同月49件)にとどまったが、通年(1~12月)では、2010年(537件)を超え、600件台に乗せる可能性も出てきた。産業別では、創業支援を受けて起業が相次いだ「飲食業」(43→67件)、「老人福祉・介護事業」(4→10件)などの「サービス業他」が207件(構成比47.9%)と突出し、半数近くを占めた。

 形態別では、「破産」が420件(構成比97.2%)と大半を占めた。負債1000万円以上の企業倒産の「破産」の構成比を8.7ポイント上回る。マーケティングや事業計画が甘く、安易な起業が多いほか、資金力が乏しい小・零細企業ほど事業の立て直しが難しいことを示している。原因別では、「販売不振」が296件(同68.5%)で最多。また、創業から日が浅く、事業基盤の確立に至らず本業で躓いた「事業上の失敗」も30件(同6.9%)発生した。

 新型コロナ感染拡大を受け、国や自治体、金融機関の資金繰り支援策で、多くの企業の資金繰りは一時的に緩和した。だが、コロナ禍の収束はみえない。負債1000万円未満の倒産は、BtoCビジネスが多く、コロナ禍で浸透した外出自粛などの影響で消費者マインドの変化を強く受けた結果ともいえる。もともと企業体力が乏しい小・零細企業、商店の厳しい経営環境を示すが、今後の負債1000万円以上の倒産動向の前兆としても注視が怠れない。

 以上のように、2020年1~8月の「負債1000万円未満」の企業倒産は、432件に達した。月平均54件で推移しており、2019年通年の512件を10月には抜き、2010年通年の537件を上回り、600件台に乗せる可能性も高まっている。負債1000万円未満の倒産は、代表者の死亡や体調不良など事業承継がうまく進まなかった企業も多い。なお、「新型コロナウイルス」関連破たんは、2~8月で累計18件が判明している。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200908_03.html