20年上半期の「後継者難」倒産は過去最多の194件

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2020年上半期(1~6月)の後継者難の倒産状況調査」結果によると、事業承継が中小企業の直面する課題に浮上するなか、同期の「後継者難」倒産は194件(前年同期比79.6%増)だった。前年同期(108件)の約1.8倍増に急増し、集計を開始した2013年以降、年上半期では2018年同期(146件)を上回り、過去最多を記録した。

 2020年上半期の全国企業倒産は4001件(同0.2%増)と微増ながら、11年ぶりに前年同期を上回った。リーマン・ショック、東日本大震災、繰り返される地震、豪雨、台風などの天災、米中貿易摩擦、そして新型コロナ感染拡大など、想定外の事態が次々と起こり、難しい経営のかじ取りが求められた。「後継者難」倒産の背景には、こうした不測の事態への対応力の欠如も一因になったとみられる。

 「後継者難」倒産の主な要因では、代表者などの「死亡」が78件(前年同期比32.2%増)で最多、以下、「体調不良」が69件(同76.9%増)、「高齢」が26件(同225.0%増)などの順。代表者などの「死亡」と「体調不良」の合計が147件(構成比75.7%)と、7割以上を占めた。会社全般の管理だけでなく、営業や経理なども担当するワンマン代表が、死亡や体調不良に直面すると、会社存続が危ぶまれることを端的に示している。

 中小企業は、代表者が経営全般を仕切るケースが多い。一方、そうした企業ほど情報共有が進まず、ブレーンが育ちにくい。このため、代表者の急な死亡や病気に直面すると、たちまち事業継続に支障を来たす。代表者の高齢化は、業績悪化に拍車がかかりやすく、業績が厳しい企業ほど後継者が見つからない悪循環に陥る。多くの中小企業で「社長不足」が正念場を迎えている。

 産業別は、「建設業」が47件(前年同期比123.8%増)で最多。2013年以降、年上半期では2013年の37件を上回り、最多を記録。次いで、「製造業」35件(同218.1%増)も、建設業と同じく過去最多を更新した。このほか、「サービス業他」34件(同6.2%増)、「卸売業」30件(同87.5%増)、「小売業」25件(同92.3%増)も前年同期を上回った。一方、「金融・保険業」は、2018年同期以来、2年ぶりにゼロだった。

 形態別では、「破産」が169件(構成比87.1%)で、最も多かった。このほか、法的倒産は、「特別清算」が4件、「民事再生法」が1件。私的倒産は、「取引停止処分」が19件、「内整理」が1件だった。代表者が会社全般を担当している企業では、代表者の動向一つで事業継続が困難となりやすい。その結果、再建の見通しが立たず、破産を選択しやすい。また、代表者の死亡に伴う相続手続きで、法人を破産処理するケースも散見される。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200722_01.html