新型コロナで変わる生活時間、消費構造にも影響

 ニッセイ基礎研究所がこのほど発表したレポート(「研究員の眼」久我尚子主任研究員)によると、新型コロナウィルスによる外出自粛生活によって、私たちの暮らしは大きく変わった。外食や旅行などの外出型消費が激減する一方、家の中で楽しむ巣ごもり消費が活発化するとともに、ネット通販や動画配信サービスなどのデジタル消費の流れが加速したことで、消費構造も大きく変わった。

 今月、多くの地域で緊急事態宣言が解除されたが、ウィルスとの戦いは依然として続いている。これから少しずつ外出型消費が増えるのだろうが、しばらくは様子見の状況が続く。ワクチンの開発など科学的な解決方法が確立されなければ、巣ごもり型を軸とした消費行動が続き、消費構造がビフォーコロナの状況に戻ることはないだろう。また、そもそも消費構造のデジタル化は、新型コロナがなくとも、近年、見られてきた動きだ。

 今回の事態で一気に加速したが、極端にデジタル志向の弱い層や休校中の子どものためのサービス契約といった期間限定的な需要を除けば、デジタル化は加速した状況が維持される。今後の消費構造を考える上で、生活時間の構造変化にも注目。今回の事態で「働き方」が大きく変わり、在宅勤務へと大きく舵が切られたが、テレワークやサテライトオフィスなどの柔軟な就労環境の整備は「働き方改革」で進められてきた流れだ。

 ところで、厚生労働省「2016年社会生活基礎調査」で、働く人の生活時間をみると、通勤時間などの移動時間に平日1日当たり平均85分を費やしている。アフターコロナでは、これまで週5日出社していたところを、例えば、週3日出社・週2日在宅勤務となれば、週170分の移動時間が浮く。つまり、アフターコロナで働き方が変わることで、週に約3時間の自由時間が増えるとすれば、それはどのような行動に費やされるのだろうか。

 3月上旬にニッセイ基礎研究所が実施した調査で、働く人の外出自粛によって増えた行動をみると、「テレビの視聴」(51.6%)や「ネットサーフィン」(44.4%)、「動画配信サービスの視聴」(27.9%)などが上位に並び、現状ではデジタル消費に費やす傾向が強い。一方で今後、新しい生活様式に基づく外出も可能になる中で、消費者はどのような時間の使い方をするのだろうか。

 レポートは、「消費行動が変われば、企業にとってのビジネス機会も変わる。デジタルかリアルか、家の中か外かという二者択一だけではなく、融合した形でのサービス提供も考えれば可能性は広がる。今後、消費者の浮いた時間をいかに獲得できるかが企業の生き残りにもつながるのかもしれない」と結んでいる。