みずほ総合研究所は、2020年夏の民間企業の一人当たりボーナス支給額を前年比▲9.2%と予測、リーマンショック後(2009年夏:同▲9.8%)以来の大幅マイナスとなる見通しだ。民間企業のボーナス支給額は、1ヵ月当たりの所定内給与に支給月数を乗じて算出される場合が多いが、所定内給与は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業収益の減少や、労働需給の急速な緩みから、前年比▲0.1%(昨夏同+0.5%)と減少に転じる見通しだ。
2020年春季労使交渉(春闘)の結果をみると、現段階(第5回回答ベース)での春季賃上げ率は、ベアと定期昇給を合わせたベースで1.93%と3年ぶりに2%を下回り、リーマンショック後に匹敵する落ち幅(2009年の前年差▲0.24%Pt)となった。ベアゼロ回答の企業が増加するだけでなく、賃上げ妥結後に開始時期を延期する企業も出るなど、雇用を取り巻く環境は厳しさを増しており、所定内給与の減少は避けられない情勢となっている。
支給月数は0.94ヵ月と、昨年(1.04ヵ月)から大幅減を予想。支給月数に半年ほど先行する傾向がある売上高経常利益率(全規模・全産業)は、日銀短観(2020年3月調査)によると、2019年度下期に前年同期差で▲0.46%Pt低下する見通し。加えて、3月の短観調査には、3月中旬以降の状況(欧米を中心としたロックダウン、国内の外出自粛の本格化)が加味されていない可能性が高く、実際の経常利益率はさらに下振れた可能性が高い。
2019年度下期の企業業績の落込みは、リーマンショック後の2008年度下期ほどではないが、4月以降の業績悪化がはっきりしている今回に関しては、昨年度下期の業績悪化幅から予想される以上にボーナス支給月数の落込みが大きくなる可能性が高い。特に、外出自粛や休業要請の影響を強く受ける宿泊・飲食サービス業などは当座の資金繰りに窮している企業が多いとみられ、賞与の落込み幅が大きくなるとみている。
以上のように、2020年夏はボーナス算定のベースとなる所定内給与、支給月数がともに落ち込み、民間企業の一人当たりボーナス支給額は前年比▲9.2%の大幅減が見込まれる。民間企業のボーナス支給総額(ボーナス支給労働者数×一人当たりボーナス)については、前年比▲10.9%と一人当たりボーナスよりも減少幅が大きくなると予測。これは、急激かつ大幅な業績悪化を受けて、ボーナスの支給対象者が減少することが主因だ。
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