全国の理美容所は約37万施設存在しており、こうした店舗過剰を背景とした同業者との競争激化に加え、家賃・人件費等の 固定費負担や広告費ものしかかり、収益を圧迫している業者が散見される。帝国データバンクが発表した「理美容業者の倒産動向調査」結果によると、2019年度の理美容業の倒産件数は180件(前年度比9.1%増)発生し、2年ぶりに前年度比増加となり、2000年以降で最多だった2017年度(166件)を上回った。
このうち、美容院やビューティサロン、エステティックサロンなどの「美容業」(162件)が全体の9割を占め、3連続して前年度から増加。理容院やバーバーなどの「理容業」(18件)は2年ぶりの前年度比増加となった。負債総額は58億6600万円(前年度比34.0%増)となり、負債10億円以上の倒産は発生しなかったものの、2年連続して前年度比増加となった。このうち「美容業」(約55億1600万円)が約94.0%を占めた。
負債規模別にみると、2019年度は「1000万円~5000万円未満」が157件で最多となり、約9割(構成比87.2%)を占めた。次いで、「5000万円~1億円未満」が12件(同6.7%)、「1億円~5億円未満」が10件(同5.6%)となった。なお、負債「50億円以上」の大型倒産は、2016年度((株)グロワール・ブリエ東京、脱毛サロン経営、負債97億7200万円)以来発生していない。
理美容業ともに地域に根付き、小規模運営を行う事業者が多いことから、負債規模別では「5000万円未満」の小規模倒産が約9割を占め、1件当たりの負債額の平均は約3260万円にとどまった。総務省が5月に発表した「家計調査」2020年第1四半期(1月~3月)によると、新型コロナウイルスの影響を受けたことなどから、理美容における支出金額累計は前年同期から落ち込んだ。
低調な消費が続く状況下、これまで営業を見合わせていた店舗の閉店や廃業を選択する事業者が今後増えてくるとみられている。個人経営業者では、代表者の高齢化や体調不良が重なり、運営体制を維持できなくなるリスクがはらんでおり、こうした中小規模事業者の淘汰は、今後さらに増加することが懸念されている。
同調査結果は↓