賃金改善理由、「労働力の定着・確保」が過去最高に

 帝国データバンクが発表した「2020年度の賃金動向に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万405社)によると、2020年度の企業の賃金動向について、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は53.3%と、4年連続で5割を上回った。しかし、前回調査(2019年1月)における2019年度見込み(55.5%)と比較すると、2.2ポイント減少している。

 一方、「ない」と回答した企業は20.2%となり、前回調査(19.1%)から1.1ポイント増加し、3年ぶりに2割超となった。また、「ある」が「ない」を10年連続で上回ると同時に、その差も33.1ポイントと非常に大きな状態が続いており、賃金動向は概ね改善傾向となっている。2019年度実績では、賃金改善が「あった」企業は68.3%と6年連続で6割を上回り、7割近い企業が賃金改善を実施していた。

 2020年度に賃金改善が「ある」と見込む企業を業界別にみると、「建設」が57.9%でトップ、次いで「運輸・倉庫」(55.2%)が続き、「サービス」(54.3%)、「製造」(54.2%)、『小売』(53.5%)も全体より高い。また、従業員別にみると、「6~20人」(58.6%)、「21~50人」(58.3%)、「51~100人」(57.9%)が全体より高く、中小企業において賃金改善を行う傾向がみられる。

 2020年度の賃金改善が「ある」と回答した企業のその理由(複数回答)については、「労働力の定着・確保」(80.6%)が2年連続で8割台となり、過去最高を更新した。半数に近い企業が人手不足を感じているなか、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっており、2015年度以降6年連続で前年を上回った。次いで「自社の業績拡大」(36.0%)が続いたものの、前年を4.9ポイント下回った。

 2019年度と比べた2020年度の自社の総人件費の変動見込みは、前年度から平均2.85%増加すると見込まれている。金額では総額約4.7兆円、そのうち従業員への給与や賞与は約3.7兆円(平均2.50%)増加すると試算される。「増加」と回答した企業は68.9%と前回調査から1.6ポイント減となり、「減少」は8.0%だった。人件費の増加傾向は継続しているものの、伸び率は微減となった。

 同調査結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200205.pdf