所有者不明土地問題、使用者を所有者とみなして課税

 所有者不明土地の問題は、人口減少や高齢化等の社会情勢の変化に伴って表面化し、近年、重要課題の一つとされている。2016年度の地籍調査によると、登記簿上の所有者不明土地の割合は約20%。面積は九州本島を上回る約410万ヘクタールにのぼるとみられ、発生抑制のための取組みを行わなければ、2040年には所有者不明土地は北海道の面積に迫る約720万ヘクタールまで増加すると推計されている。

 そこで、2020年度税制改正においては、所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、まず、現に所有している者の申告を制度化する。市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿上の所有者が死亡している場合、その土地・家屋の現所有者に、その市町村の条例で定めるところにより、その現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとする。

 次に、使用者を所有者とみなす制度を拡大する。市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができることとする。「一定の調査」とは、住民基本台帳及び戸籍簿等の調査並びに使用者と思料される者その他の関係者への質問その他の所有者の特定のために必要な調査とする。

 上記により使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録しようとする場合には、その旨をその使用者に通知するものとする。これらの改正は、2021年度以後の年度分の固定資産税について適用する。また、現に所有している者の申告の制度化では、固定資産税における他の申告制度と同様の罰則を設け、2020年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用する。

 なお、所有者不明土地の発生予防のため、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除を創設する。個人が、都市計画区域内にある低未利用土地について市区町村が確認したもので、譲渡価額が500万円以下の土地を、土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行日又は2020年7月1日のいずれか遅い日から2022年12 月31 日までの間に譲渡した場合には、長期譲渡所得から100 万円を控除する。