親族などの介護を理由に勤務先を退職する「介護離職」が次第に広がっている。東京商工リサーチが全国の企業を対象に実施した「介護離職に関するアンケート調査」結果(有効回答数6545社)によると、過去1年間に介護離職が発生した企業は約1割に達した。離職者の男女別では「男性が多い」が「女性が多い」を11.9ポイント上回り、少子高齢化で未婚者が親を介護するケースも増加するなど、最近の傾向を色濃く反映する結果となった。
介護離職者の男女比については、男性(51.3%)が女性を11.9ポイント上回った。総務省の2017年就業構造基本調査では、「介護・看護のために過去1年間で前職を離職した人」の数は、男性が2万4000人で前回調査の2012年に比べ4100人の増加。一方、女性は7万5100人で前回から6100人の減となっている。このトレンドを裏付けるように、今回の調査結果でも、親族の介護等で勤務先を退職する社員は男性が増えている。
「仕事」と「介護」の両立支援に向け、自社での取組みや整備した制度は、4割以上(44.7%)の企業が「就業規則や介護休業・休暇利用をマニュアルなどで明文化」を選択し、一般社員への浸透が比較的低い「介護休業や介護休暇の周知、奨励」(構成比17.7%)と同様に、制度の認知や啓発に努めている。次いで、「従業員の介護実態の把握」(同14.7%)、「介護に関する悩みなどを相談できる体制」(13.0%)と続く。
近年、大企業やスタートアップ企業を中心に導入がみられる「在宅勤務制度やテレワーク」については、大企業・中小企業で整備に大きな差があった。資本金1億円以上では11.5%の企業が取り組む一方、1億円未満は5.0%と半分にとどまった。また、該当社員への貸付を含む「介護に関する資金支援」は全企業で1.5%に過ぎない。介護への所要資金の支援に比べ、その前段階となる制度周知や利用環境の向上時点で、まだ道半ばの状態だ。
「仕事」と「介護」の両立支援について、自社での取組みが十分と思う企業は、全体の12.0%で、「思わない」とした企業(構成比48.2%)と36.2ポイントの大差がついた。資本金別では1億円以上、1億円未満とも差はなかった。「わからない」と回答した企業は、全体の39.7%あった。まだ、規模にかかわらず、企業の中で介護への意識が高まっていない現状も垣間見える。法整備とは別に、介護人材への待遇向上などを望む声もあった。
同調査結果は↓