国内ワインメーカー、醸造用ブドウ不足が最大の懸念

 東京商工リサーチがこのほど発表した「全国ワインメーカーに関する調査」結果(有効回答数70社)によると、国産ワインの出荷が堅調な伸びをみせているが、業界や種々の経営課題も浮かび上がった。調査結果では、国内の主要ワインメーカーの約7割(68.5%)が、ワイン原料の醸造用ブドウ不足を最大の懸念材料に挙げた。これは、後継者不足などで醸造用ブドウ生産に携わる農家が減っていることが背景にある。

 さらに、近年はシャインマスカットなど付加価値の高い食用高級ブドウに移行する農家もみられ、原料事情は今後も厳しさを増しそうだ。回答した70社の従業員数の内訳は、「1~5人」が26社(構成比37.1%)。次いで、「11~30人」が24社(同34.3%)、「6~10人」が13社(同18.6%)で、従業員10人以下が39社(同55.7%)と半数以上を占めた。一方、「31~50人」は4社、「51人以上」は3社にとどまり、それぞれ5%前後だった。

 70社のうち、2019年度出荷量の見込みは30社(構成比42.8%)が「横ばい」と回答。「増加」は23社(同32.9%)、「減少」は17社(同24.3%)。「減少」では、2018年10月に始まった「果実酒等の製法品質表示基準」(ワイン法)の影響が指摘された。中には原料の不足から、「ご当地の名を冠したワインの減産に直面している」との声もあった。今後も地場原料の入手次第で生産量が左右される地域・メーカーが増える可能性もある。

 2018年12月にTPP(環太平洋経済連携協定)、2019年2月に日欧EPA(経済連携協定)がそれぞれ発効され、日欧EPAでは、ワインの関税が即時撤廃されたため、発効前に海外の競合品流入を懸念する声もあった。だが、発効から半年以上が経過し、「良くない影響があった」は9社(構成比12.9%)と1割強にとどまった。ただ、「良い影響があった」はゼロで、回答から見る限り国内メーカーにはマイナスの側面が色濃く出ているようだ。

 原材料の醸造用ブドウの調達環境について、現状の国内の充足感は「足りない」が70社中、48社(構成比68.5%)と約7割にのぼった。また、「充足している」メーカーでも「将来的な原料需給に不安を感じる」との回答が複数みられ、今後の醸造用ブドウの調達環境は予断を許さない状況となっている。一方、自社目標分の調達が可能とのメーカーは、46社(同65.7%)にのぼり、自社の目標分を「調達できていない」の24社の約2倍だった。

 国内産の原材料が「不足している」と回答した48社のうち、7割以上にのぼる35社(構成比72.9%)が醸造用ブドウを生産する「農家数・後継者が不足」と回答。近年は、ワイン原料用の醸造用ブドウより、市場において高値で取り引きされる「シャインマスカット」など、高級食用ブドウの生産に移行する農家も増えており、こうした生産農家の動向を指摘するメーカーも16社(構成比33.3%)あった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20191119_02.html