厚生労働省は21日、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)に関して企業に求める雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案を、厚労省の諮問機関である労働政策審議会に示した。同指針は、パワハラ防止のために、事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものとして、職場におけるパワハラの定義を示した上で、パワハラに該当する場合・しない場合も例示している。
職場におけるパワハラの定義は、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、 (2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素を全て満たすものとした。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワハラには該当しないとしている。
その上で、各要素について具体的に示し、例えば、(1)の優越的な関係については、言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものと定義。職務上の地位が上位の者の言動や、同僚や部下からの集団行為で拒絶が困難なもの、業務上必要な知識や豊富な経験のある同僚や部下による言動で、その協力がなければ業務の円滑遂行が困難であるものなどが該当するとした。
また、(2)の業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動については、社会通念に照らし、その言動が明らかに事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものと定義。 例えば、業務上明らかに必要のない言動や、業務の目的を大きく逸脱した言動、業務を遂行するための手段として不適当な言動、その行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動などが該当するとした。
さらに、厚労省が公表済みのパワハラに関する、(1)暴行・障害(身体的な攻撃)、(2)脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切離し)、(4) 業務上明らかに不要なこと等の強制、仕事の妨害(過大な要求)、(5)能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過少な要求)、(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)、の6つの行為類型ごとの事例も示した。
例えば、(1)に該当例として、殴打、足蹴りを行うことや、怪我をしかねない物を投げつけることとした一方で、誤ってぶつかる等により怪我をさせることは該当しないとした。また、(2)では、人格を否定するような発言をすることや、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うことなどは該当し、その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすることなどは該当しないとした。
同指針の素案は↓