管理費等の無考慮は特別の事情には当たらないと棄却

 相続により取得したマンション等の不動産の評価額が過大であるか否か、つまり評価通達では適正な時価を算定することができない特別の事情があるか否かの判断が争われた事件で大阪高裁(山田陽三裁判長)は、原審と同様に、評価通達が管理費や修繕積立金を考慮していないことが、評価通達によってはマンションの評価を行うことができない特別の事情には当たらないと判示して、相続人らの主張を棄却した。

 この事件は、相続に伴って取得した各不動産の評価額が過大であったなどとして相続人らが二度にわたった更正の請求をしたところ、原処分庁が当初の更正の請求に対しては減額更正をしたものの、再度の更正の請求に対しては更正をすべき理由がない旨の各通知処分をしてきたため、相続人側が各更正処分のうち納付すべき相続税額を超える部分の取消し及び各通知処分の取消しを求めて提訴したもの。

 争点は広大地補正の必要性、評価通達では適正な時価を評価できない特別な事情の有無等複数あったが、大阪地裁が相続人らの主張をことごとく斥けたことから、原審の取消しを求めて更に控訴したという事案である。そのうち、マンションの評価について原審が、管理費及び修繕積立金等はマンションの客観的交換価値とは無関係であると判示して請求を斥けた。

 そこで相続人側は、控訴審で、マンションが主たる建物と附属建物からなる特異な設計で、管理費及び修繕積立金等の月額が高額であるから一般向けファミリー型分譲マンションとは異なると主張するとともに、管理費及び修繕積立金等を滞納するとその徴収のために強制執行が申し立てられ、その手続きにおいては物件の価額が低下する他、一般の市場でも管理費及び修繕積立金等が高い物件は低い物件と比較して収益価格が低下し、評価額も低くなるものであるから、原審の判断内容は誤りであるとも主張してその取消しを求めたわけだ。

 これに対して大阪高裁は、評価通達において管理費や修繕積立金が家屋の評価に考慮されていないことが、評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情に当たらないことは原審の判断どおりであると指摘するとともに、設計が特異であり専有部分と附属建物とを一体処分しなければならないことも、同様に評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情には当たらないと判示して、棄却した。

            (2018.02.02大阪高裁判決、平成29年(行コ)第146号)