賃金不払残業、1768社に計約125億円の支払を指導

 厚生労働省は、2018年度に時間外労働などへの割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表した。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、今年3月までの1年間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたもの。

 是正結果によると、是正企業数は前年度を102社下回る1768社、その是正支払金額も同321億7814円下回る125億6381万円だった。業種別にみると、「製造業」が332社(構成比18.8%)で最多、次いで「商業」319社、「保健衛生業」230社、「建設業」179社と続く。1企業当たりの支払われた割増賃金額の平均額は711万円(前年度2387万円)。また、是正企業1768社の対象労働者数は11万8837人(同20万5235人)だった。

 対象労働者数を業種別にみると、「保健衛生業」が2万3981人(構成比20.2%)で最多、次いで「製造業」2万3922人、「商業」1万5516人と続く。労働者1人当たりの支払われた割増賃金額の平均額は11万円だった。是正支払額を業種別にみると、「保健衛生業」が27億2010万円(同21.7%)で最多、次いで「商業」18億6407万円、「製造業」17億4632万円、「教育・研究業」13億7392万円となっている。

 賃金不払残業の解消のための取組事例をみると、小売業のA社は、残業をしている労働者がいるにもかかわらず、管理者が労働者全員のタイムカードを終業時刻に合わせて打刻しているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。会社は、タイムカードの記録と入退館記録との間にかい離が認められ、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導した。

 また、金融業のB社は、割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められ、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導した。

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