5年間に会計不正の事実を公表した上場会社は146社

 日本公認会計士協会がこのほど発表した「上場会社等における会計不正の動向(2019年版)」によると、2014年4月から2019年3月にかけて会計不正の発生を公表した上場会社等は、146社だった。なお、2018年4月1日から2019年3月31日までの期間(「2019年3月期」)においては、33社が会計不正の事実を公表し、そのうち、2019年3月31日現在で27社が調査結果まで公表している。

 2014年4月から2019年3月の5年間に会計不正の事実を公表した上場会社等146社の会計不正のうち、不正の内容が判明するものを分類すると、一般的に、資産の流用による影響額よりも、粉飾決算による影響額の方が多額になる。そのため、上場企業等が適時開示基準にのっとって公表する数は、粉飾決算のほうが多くなると考えられる。2019年3月期においては、公表された会計不正のうち76.3%が粉飾決算である(件数ベース)。

 また、会計不正のうち、粉飾決算をより詳細に手口ごとに集計してみると、収益関連科目は会社にとって重要な指標の一つであることから、「売上の過大計上」、「循環取引」、「工事進行基準等」の会計不正の公表が多いとみられる。なお、2019年3月期においては、公表された粉飾決算45件のうち、「売上の過大計上」が18件、「工事進行基準等」が1件と、42.2%に当たる19件が収益関連の会計不正である(件数ベース)。

 売上の過大計上の不正事例をみると、建設業を営むA社では、工事の完了日を操作して売上を先行計上する処理や、工事を恣意的に分割して工事が完了したものだけ早期に売上を計上する行為が行われた。これらの多くは、売上及び事業利益の目標数値を達成することを目的としていた。また、システム上、工事完了報告書が回収されていなくても売上計上処理が可能であったため、これを利用して売上を先行計上する処理も行われていた。

 2014年4月から2019年3月にかけて会計不正の事実を公表した上場会社等146社の会計不正のうち、会計不正が行われた事業が判明しているものを業種別に分類してみると、過去5年間において、業種別では、「建設業」が20社(構成比13.7%)で最多であり、次いで「サービス業」が19社(同13.0%)、「卸売業」が18社(同12.3%)、「情報・通信業」が14件(同9.6%)、「電気機器業」が12件(同8.2%)と続いている。

 「上場会社等における会計不正の動向」は↓

https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-3-5-2-20190613.pdf