国税庁は、非居住者等に支払う際の源泉徴収で、誤りやすい事例を紹介している。非居住者や外国人(「非居住者等」)に対して、源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」を支払う場合には、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない場合がある。したがって、取引において、非居住者等に何らかの支払をする場合には、その対価が源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」に該当するかを確認する必要がある。
まず、土地等の対価に係るもの。非居住者等から、日本国内にある土地や建物等の不動産を取得した場合、その対価を支払う際に、所得税等を源泉徴収する必要がある。ただし、個人が、自己やその親族の居住の用に供するために取得した土地等で、その対価の額が1億円以下の場合は、その個人が支払うものは源泉徴収をする必要がない。対して、法人が取得して対価を支払う場合は、1億円以下であっても源泉徴収をしなければならない。
次に、不動産の賃借料等に係るものがある。非居住者等から、日本国内にある土地や建物等の不動産を借りる場合、その賃借料を支払う際に、所得税等を源泉徴収しなければならない。ただし、個人が、自己やその親族の居住の用に供するために土地や家屋を借りる場合に支払うものについては、源泉徴収をする必要はない。対して、法人が借りて賃借料を支払う場合には、源泉徴収をする必要がある。
そのほか、(1)国内において業務を行う者が、非居住者等に支払う工業所有権や著作権等の使用料又はそれらの取得の対価のうち、その国内業務に係るものを支払う際や、(2)非居住者等に支払う給与その他の人的役務の提供に対する報酬等のうち、国内において行った勤務その他の人的役務の提供に対するものを支払う際には、ともに所得税等を源泉徴収しなければならないので注意が必要だ。
なお、所得税法上、「非居住者」とは、居住者以外の個人と規定している。「居住者」とは、日本国内に「住所」があるか又は現在まで引き続き1年以上「居所」がある人をいう。「住所」とは「個人の生活の本拠」をいい、生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定することになる。したがって、その人の生活の中心がどこかで「住所」が決まる。また、「居所」とは、その人の生活の本拠ではないが、現実に居住している場所をいう。