所得税調査、1割の実地調査で申告漏れの6割を把握

 国税庁によると、個人に対する今年6月までの1年間(2017事務年度)の所得税調査は、前事務年度(64万7千件)に比べ3.8%減の62万3千件行われた。そのうち、約62%にあたる38万4千件(前事務年度40万件)から同1.7%増の9038億円(同8884億円)の申告漏れ所得を見つけた。その追徴税額は同7.6%増の1196億円(同1112億円)。1件平均145万円(同137万円)の申告漏れに対し19万円(同17万円)を追徴した。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前事務年度に比べ1.5%増の5万件を実施、うち約87%にあたる4万4千件から同12.9%増の総額5080億円の申告漏れ所得を見つけ、同17.8%増の887億円を追徴。件数では全体の8.0%に過ぎないが、申告漏れ所得金額は全体の56.2%を占めた。調査1件当たりの申告漏れは1021万円と、全体平均の145万円を大きく上回る。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比9.4%増の2万3千件行われ、うち1万7千件から同5.3%減の814億円の申告漏れを見つけ、60億円を追徴。1件当たり平均申告漏れは351万円。一方、簡易な接触は、同4.7%減の55万件行われ、うち32万4千件から同10.8%減の3143億円の申告漏れを見つけ249億円を追徴。1件当たりの平均申告漏れは57万円だった。

 実地調査トータルでは、前事務年度比3.9%増の7万3千件の調査を行い、うち6万件から同10.0%増の5894億円の申告漏れを見つけ、947億円を追徴。つまり、実地調査件数は全体の11.7%と約1割に過ぎないが、申告漏れ所得全体の6割半ば(65.2%)を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されていることが裏付けられた。

 このように、近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。なお、業種別1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、「キャバクラ」(2897万円)、「風俗業」(1974万円)、「不動産代理仲介」(1774万円)までがワースト3。

 この件は↓
http://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0018011-079.pdf