相続分譲渡は贈与に当たり遺留分請求を認める初判断

 最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は19日、共同相続人間でされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産(預金・債権・固定資産など、金銭的価値のある財産の総体)及び消極財産(財産のうち、借金などの債務)の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとの初判断を示した。

 この事案は、亡父の遺産に対する相続分を母親が生前に子Aに生前に無償譲渡したが、母親の死後、Aに対し、譲渡されなかった他の子が、その相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして、Aが亡父の遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続き等を求めたもの。本件相続分譲渡が、母の相続で、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与に当たるか否かが争われている。

 二審の東京高裁は、相続分の譲渡は必ずしも譲受人に経済的利益をもたらすものとはいえず、譲渡に係る相続分に経済的利益があるか否かはその相続分の積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定しなければ判明しないものであるから、本件相続分譲渡は、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与には当たらないと判断し、遺留分は侵害されていないとして、譲渡されなかった子(上告人)の請求を棄却した。

 これに対し最高裁は、相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができるとした上で、遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは、以上のように解することの妨げとなるものではないと指摘。

 したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした母親の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとの初判断を示し、贈与には当たらないとした二審の判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻している。

 最高裁の判決文は↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/060/088060_hanrei.pdf