周知のように、所得税では課税の対象となる金額を何段階かに分けて課税する「超過累進税率」を採用しているが、超過累進税率では、課税の浮き沈みが激しい業種や職種の場合は、複数年でみれば税負担が重くなることが考えられる。平均課税制度は、年ごとの収入の変動が激しい所得(変動所得)や、臨時の所得(臨時所得)がある場合に、通常の超過累進税率よりも低い税率を適用して所得税の計算ができる制度である。
平均課税制度の前提となる変動所得とは、事業所得や雑所得のうち、自然現象その他の条件により年々の所得が大幅に変動する所得が該当する。具体的には、(1)漁獲若しくはのりの採取から生ずる所得、(2)はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝若しくは真珠(真珠貝を含む)の養殖から生ずる所得、(3)原稿若しくは作曲の報酬に係る所得又は(4)著作権の使用料に係る所得、をいう。
また、臨時所得とは、事業所得や不動産所得、雑所得のうち、数年分の収入が一括して支払われる性格の所得で、例えば、土地や家屋などの不動産、借地権や耕作権など不動産の上に存する権利、船舶、航空機、鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権などを3年以上の期間他人に使用させることにより、一時に受ける権利金や頭金などで、その金額がその契約による使用料の2年分以上であるものの所得などのほか、これらに類する所得をいう。
これらの変動所得や臨時所得は、所得の金額が毎年ほぼ平均する場合と比べると、年ごとに超過累進税率を適用する関係から、その数年間の税負担を比較すると大きな差異を生ずることがある。そこで、この税負担の差異を調整するため、一定の条件に該当する変動所得や臨時所得については、課税総所得金額に超過累進税率を乗ずる方法によらず、特別な税額計算の方法によることとして、税負担を緩和しているのだ。
平均課税適用の条件は、所得が変動所得又は臨時所得だけのときは、変動所得額又は臨時所得額がその年の総所得額の20%以上であること、また、変動所得と臨時所得の両方の所得があるときは、その年の変動所得額と臨時所得額の合計がその年の総所得額の20%以上であること(その年の変動所得が、過去2年間の変動所得額の平均額以下であれば、その年の臨時所得額のみが総所得額の20%以上であること)となっている。
その計算方法は、(1)課税総所得金額-臨時所得金額×4/5=調整所得金額(課税総所得金額が臨時所得の金額以下のときは、課税総所得金額の1/5を調整所得金額とする)、(2)調整所得金額×超過累進税率=税額(A)、(3)(A)÷調整所得金額=平均税率、(4)課税総所得金額-調整所得金額=特別所得金額、(5)特別所得金額×平均税率=税額(B)、(6)(A)+(B)=その年の所得税額、となる。