企業の77%が賃上げ実施も、7割弱は賃上げ率不足

 帝国データバンクが発表した「2024年度賃上げ実績と初任給の実態調査」結果(有効回答数1050社)によると、2024年4月の正社員給与の前年同月からの変化(見込み含む)については、『賃上げ』する/した企業は 77.0%となった。その内訳をみると、「3%増加」とした企業が22.0%でトップとなり、「5%増加」(15.0%)、「2%増加」(12.4%)が続いた。一方で、『据え置き』は16.6%、『賃下げ』は0.6%だった。

 連合の目標である「賃上げ率5%以上」を実現した企業割合は26.5%にとどまった一方、5%未満は67.7%と3社に2社、7割弱にのぼり、厳しい結果となった。なお、『正社員はいない/分からない』は5.8%だった。規模別に『賃上げ』する/した企業の割合をみると、「大企業」は77.7%、「中小企業」は77.0%とほぼ同水準となった。一方で、「小規模企業」は65.2%と全体(77.0%)を11.8ポイント下回った。

 また、2024年度入社における新卒社員の採用状況については、『採用あり』は45.3%、『採用なし』は53.1%。規模別に『採用あり』の割合をみると、「大企業」は76.2%と全体(45.3%)を約30ポイント上回った一方で、「中小企業」は40.9%、「小規模企業」は23.7%となり、全体を大きく下回った。中途採用しか行っていない企業が複数みられるほか、採用活動を行ったものの人材を獲得できなかった企業もあった。

 新卒社員の採用がある企業の初任給の金額は、「20~24万円」が57.4%でトップ、次いで「15~19万円」が33.3%で続いた。初任給が『20万円未満』の企業の割合は35.2%と、3社に1社となった。企業からは、「求人市況を考えると、初任給など賃金を引き上げたいが、仕入れ価格の高騰に対し販売価格がとても追いつかず、特に中小企業の経営は苦しい」(機械製造)との声があったように、経営状況により諦めざるを得ない企業もあった。

 帝国データバンクは、「足元では円安の進行、エネルギー価格の上昇などコストアップにつながるリスクが高まっているが、中小企業はコストの上昇分を上手く見える化して価格改定の交渉を行うほか、自社商品の付加価値を上げるなど、価格転嫁を行いやすくする工夫が一策と言える。加えて、デジタル化・省人化を通して生産性の向上を図ることで賃上げ原資を確保するなど、さまざまな対策が必要となってくるだろう」とコメントしている。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240408.pdf