原油価格は、1月21日にWTI(ニューヨーク原油市場)で1バレル=87ドル台の高値と7年ぶりの水準まで上昇した。国内価格においても10月以降緩やかな円安傾向が続いた影響を受け、7年ぶりの水準を記録している。さらに、レギュラーガソリンの価格は15週連続して160円台で推移、軽油や重油の価格も高止まりが続いており、企業のコスト負担増に懸念が生じている。
そこで、帝国データバンクが原油価格の上昇が経済に与える影響を分析したところによると、同社の「TDB景気動向調査」で算出している12月の仕入単価 DIは68.1となり、横ばいを一度はさみ19ヵ月連続で上昇してきた。他方で、販売単価 DIも55.3と過去最高の水準となっているものの、仕入単価の上昇に販売単価の上昇が追い付いていない状況が続いている。
一方で、価格転嫁の状況をみると、2020年3月・4月は原油先物価格が下落、仕入単価DIが大きく低下したことで価格転嫁率は1を上回った。しかし、その後2021年に入り産業全体として徐々に価格転嫁率が低下していたなかで、ガソリンスタンドにおける原油価格上昇のガソリン価格への転嫁率はおおむね90%台後半で推移してきた。しかしながら、全額を転嫁するには至っておらず、徐々に収益力にも厳しさが表れている。
2022年末に原油価格が1バレル=100ドル(CIF価格)まで上昇した場合の影響をTDBマクロ経済予測モデルでシミュレーションを実施。その結果、2022年度の民間企業の経常利益は燃料価格の上昇によるコスト負担の増加や家計の所得減少にともなう節約行動などにより、標準的なシナリオと比較して約1兆5530億円減少、企業間取引価格(国内企業物価指数)の上昇率が0.4ポイント高まると予測されている。
OPEC(石油輸出国機構)とロシアで構成されるOPECプラスは2022年末までの原油の減産延長で合意している。加えて、世界経済の回復で原油需要は今後とも高まっていくことが見込まれる。原油価格は幅広い商品・サービスに影響を与えるが、コスト増による値上げには限界があり、企業の価格設定行動が大きく変わる可能性がある。各社はこうした先行きを見通しながら企業活動を進めていくことが一段と重要になっている。
同調査結果は↓